特集「住友グループの取り組み」
社会課題の解決に貢献する住友グループの最新の取り組みを毎回、テーマを決めて紹介します。

第2回 人工知能AIと共に

人工知能(AI)の進化が著しい。1997年に米IBMの「ディープ・ブルー」が当時のチェス世界チャンピオンに勝利。2016年には米グーグルの「アルファ碁」が人間のプロ囲碁棋士を打ち負かした。これらのニュースは、AIがすでに驚異的な「力」を身に付けていることを強く印象付けた。

そのAIが、私たちの生活に身近な存在になりつつある。NECはAI 技術を活用し、製造現場の検品業務を省力化するソリューションを販売開始。三井住友銀行はAI技術の「予測分析自動化技術」を使って、銀行内で蓄積されている膨大なデータの分析に当たろうとしている。SCSKは企業の顧客対応を支援する、AI対話型エージェント「Desse」を提供中。

社会のさまざまな場面でAIが活用される一方、「AIは人間の仕事を奪うのではないか」といった極端な言説もある。しかし、3社の事例を見ると、むしろ今までにない形で企業活動の役に立ち、人間の活躍の場をさらに広げてくれるものであることがよく分かる。

今後はAIの開発のみならず、それをどのように使うか、どのように共に暮らしていくか、私たちの知恵が試されることになる。

事例 1


お客様の質問にAIが自動回答 SCSK

SCSK AI対話型エージェント「Desse(デッセ)」
SCSKのAI対話型エージェント「Desse(デッセ)」は、企業のカスタマーサポートやヘルプデスク業務を代行するシステムとして注目を浴びている。

企業には、お客様のお問い合わせに対応するカスタマーサポートやヘルプデスク業務が欠かせない。しかし、そこに充てられる人的リソースもコストも限られている。よくある質問をホームページにFAQのような形で情報を掲載しても、なかなか見てもらえない── 。

そんな企業の悩みを解決しようとSCSKが開発したのが、AI対話型エージェント「Desse(デッセ)」だ。自社のホームページ上に、窓口となるキャラクターを置いておき、それを通じてお客様からの問い合わせに自動的に回答するシステムだ。インターネットを使ってテキストでリアルタイムにコミュニケーションを行う「チャット」のように、お客様は対話を通じて容易にお困りごとを解決することができる。Desseは話し言葉のような自然な文章を理解し、知識データベースとして用意された想定問答から関連性の高い内容を自動的に判断することができる。これは文章を自動的に翻訳する「機械翻訳」の延長線上にある技術で、SCSKが長年、研究を続けている分野であることから極めて信頼性が高い。

DesseはSCSK独自開発の質問応答エンジンを搭載し、お客様がテキストで打ち込んだ、話し言葉のような自然な文章を理解することができる。似たような意味を持つ単語の解釈や表現の違いも把握が可能。知識データベース(想定問答)の中から最適なものを選んで自動的に回答する。

Desseはすでに多くの企業で活躍している。とりわけ力を発揮しているのが、コールセンター業務の負荷削減だ。コールセンターに問い合わせの電話が来ると、当然その対応に人的リソースを割かなければならないが、Desseを導入することで、お客様が電話をかける以前にお困りごとを解消できるチャンスが増え、コールセンターにかかってくる電話の本数を減らすことができる。ある企業では、電話件数をほぼ半減できた事例もある。

もう一つのDesseの強みは、運用が簡単なことだ。例えば回答の精度を上げるために想定問答のパターンを増やす場合。本来はプログラムの知識がなければできないところだが、Desseは表計算ソフトに質問と回答をテキストで入力し、そのファイルをサーバーにアップロードするだけで済む。現在は日本語のサービスのみだが、多言語対応が容易である点も特長。これはDesseが機械翻訳技術から発展したものであることによる。将来を見据え、英語や中国語などでも使える可能性が広がっている。さらに、質問と回答のやり取りの中で顧客データを効率的に集めることができ、マーケティングやプロモーションへの活用も可能になる。

たとえ業務の一部であっても機械に任せられれば、その分、人的リソースを他の業務に充てることができる。Desseのような気軽に導入できるシステムを取り入れることで、企業はAI活用の未来像を描くこともできるだろう。

事例 2


AIで新たなビジネスチャンスをつかむ 三井住友銀行

三井住友銀行 「予測分析自動化技術」を本格導入
三井住友銀行は顧客情報、入出金情報、アクセスログといった膨大なデータを、NECの「予測分析自動化技術」を使って分析。今まで見えていなかったニーズを掘り起こし、顧客により良い提案を行うという。

AIの発展は、膨大なデータから人間には簡単に見いだせない有意義な情報をも見えるようにしてくれる。三井住友銀行は2016年、NEC、日本総合研究所とともに、顧客データの分析を最適な提案につなげる実証実験を実施。期待以上の成果が得られたことで、近々正式導入に踏み切る。

顧客ニーズは直接ヒアリングすればつかめるが、適切なタイミングで顧客が銀行窓口を訪れるとは限らない。となれば、入出金情報や投資信託、保険、住宅ローンなどの利用情報の分析が、顧客を知る重要な手段となる。従来はデータ分析の専門家であるデータサイエンティストが複数で処理に当たり、1テーマにつき数カ月の時間をかけて分析を行うことでニーズを予測してきた。しかし、経済や社会を巡る状況は刻々と変わり、対応にタイムラグがあると機会損失につながる。データサイエンティストの人材も不足しがちで、顧客データをいかに効率的に分析し、活用するかが課題となっていた。

三井住友銀行 データマネジメント部の宮内恒さん(左)と長尾卓司さん(右)。予測分析自動化技術の導入により「我々の仕事のやり方自体も大きく変わる」と期待を寄せている。

そこに登場したのがNECの「予測分析自動化技術」。同技術では、データの集合から一定の傾向を導き出しAI自身で判断できるようトレーニングする機械学習を発展させ、従来よりはるかに短期間でのニーズ予測を可能にしている。加えて、これまでの技術では難しかった予測根拠も確認できるようになった。実証実験では、ある期間に顧客がどのような金融商品を購入したか(あるいは、しなかったか)というデータから「今、この顧客はどのような金融商品を購入する可能性があるか」を予測。実際の結果に照らし合わせると、従来と同等以上の精度を実現した。また、2~3カ月かかっていたデータ分析がわずか1日で完了し、生産性が約40倍向上したという。

これにより、最適なタイミングで最適な商品を顧客に提案できるようになる。例えば顧客が住宅の購入を考えているとして、その時期が直近か、5年後かで提案のやり方は変わってくる。5年後であれば、すぐに住宅ローンを提案するのは有効ではなく、他の金融商品で資産形成を促す方が得策かもしれない。そのあたりの判断が、同技術によって可能となるわけだ。

三井住友銀行では、銀行の業務全体を変革し得るものとして同技術に期待を寄せており、2018年1月の導入に向けて準備段階に入っている。来年度からは三井住友フィナンシャルグループへの横展開も図る構えだ。将来的には顧客を知るツールとしてだけでなく、経営戦略を練るためのツールとして活用することも視野に入れている。

事例 3


AIでものづくりの課題を解決 NEC

NEC 「AI Visual Inspection」
生産工場の検品作業工程は、まだまだ人の目視に頼らざるを得ない部分が大きいという。職人レベルともいえるその技をAIに任せようというのが、NECの「AI Visual Inspection」だ。(写真はイメージ。図はNEC提供資料を元に作成)

製造業における生産工場での検品作業には、どうしても人の目視に頼らなければならない部分がある。熟練の検品作業員は素人が見てもまず分からない微細な傷や色ムラ、製品によっては内部の不良をも見つけ出すという。まさに職人技である。

常に神経を張り詰める仕事だけに負担が大きい。その上、近ごろの人材不足で検品作業の担い手が足りない状況だ。一方、「マシンビジョン」と呼ばれる検品作業を機械で自動的に行うシステムもあるにはあるが、技術的課題や運用にコストと時間がかかるため普及が伸び悩んでいる。検品作業をいかに効率よく行うか、そして、いかに品質管理を向上させるかは製造業の大きな課題なのだ。

その課題をAIで解決しようと開発されたのがNECの「AI Visual Inspection」である。仕組みはこうだ。

まずは製造現場の検査工程にある製品を撮影し、画像データをNECが提供するクラウド上に保存・蓄積する。その画像データを基に、クラウド側のAIが製品の良品・不良品の違いを自動的に学習し“判定モデル”を作成。この判定モデルは、クラウドから製造現場に設置した端末に配信される。現場端末には別のAIが内蔵されており、工場の稼働時には、こちら側のAIが判定モデルに基づいて製品の良品・不良品を判定する。判定にかかる時間は1個当たり数秒程度だ。

人の目視ではどうしてもミスをゼロにするのは難しいが、機械を使ったAI Visual Inspectionでは、より製造品質の均一化を図ることが可能。製造ラインに新たな製品が追加された場合でも、クラウド側のAIで自動的に判定モデルを更新できるため、システムの追加の設計・開発作業を大幅に軽減できる。

さらにAI Visual Inspectionでは検査工程を通過するすべての製品の画像、良品・不良品の判定結果、不良内容がデータとして自動的に蓄積されるというメリットがある。そのデータを見れば、どのような不良がどれくらいの頻度で起きているかが浮き彫りになり、不良原因の特定とその改善がよりスピーディーにできるわけだ。

NEC 第一製造業ソリューション事業部の神保典和さん(左)と金子典雅さん(右)。近年、NECはソリューション事業に大きな力を注いでいる。その肝となるのが、IoTそしてAIであるという。

ところでNECは「グローバル競争を勝ち抜く強い製造業を目指す」という目標の下、製造業各社とのコラボレーション事業「NEC ものづくり共創プログラム」を推し進めている。NEC自身、ものづくり企業であり事業を通じて培ったノウハウが膨大にある。それを会員企業のメンバーとシェアし、それぞれが抱える課題の解決法を一緒に考えたり、コンサルティングなどの形で支援したりするのがこのプログラムの目的だ。参加企業は1,102社、会員数は3,874人に上る(2017年7月現在)。メンバーの注目の的はもっぱらIoT(モノのインターネット)であり、AIをどのように活用するかにある。

本プログラムはNECにとって、新たなソリューション開発のヒントを得る場にもなっており、今後もAIを活用した新たなソリューションが登場しそうだ。近ごろ、日本のものづくり産業は「踊り場に立つ」とまで言われるが、元の勢いを取り戻し、さらに成長していくための、重要な鍵となるに違いない。

SUMITOMO QUARTERLY NO.150より転載

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