住友をふり返る

人は今を生きる。だが、未来を知りたいと願う。そのために過去をふり返る。

住友の商標

住友の商標である「菱井桁」は、住友の屋号「泉屋」に由来する。泉という字は、『孟子』によると、「原泉混混として昼夜を舎めず。科に盈ちて而る後に進み、四海に放る。本有る者は是の如し」とあるように、清冽な水が昼夜をわかたず滾々と湧き出てつきない意味があった。また、お金のことを「貨泉」あるいは「泉貨」と称したので、商人にとって泉の象徴でもある「井桁」は、非常に縁起のよい商標として一般的に用いられてきた。そのため、江戸時代の風俗屏風や絵画を見ると、暖簾のマークに「井桁」はたくさん見うけられるのである。

九十九丸の印鑑
住友の商船九十九(つくも)丸の印鑑(35×26×59mm)。
井桁のマークが刻まれている。79トンの西洋型風帆船で1881年に購入。朝鮮、東北、北海道航路などに就航していた。1884年に売却された。
撮影 戸田嘉昭

ところが、明治時代になると商標は、商家の「信用」を象徴する固有の権利として法律で認められるようになり、1884(明治17)年6月商標条例が公布されたのを機に、住友は政府に「(井桁マーク)住友」という商標登録願を提出し、翌85年6月許可された。「菱井桁」だけでなく「住友」の名も商標としたのである。1913(大正2)年4月には、正式に「菱井桁」の寸法割合を定め、商標を見ただけでも住友と識別 できるようにした。それが今日「住友井桁」として伝わり、住友各社で使用されている。「住友井桁」には、400年間住友の先人が脈々と築きあげてきた「信用」の精神が息づいている。

財閥解体 住友の場合へ

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