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住友の歴史と事業精神住友の歴史と事業精神

住友人物列伝:総理事と呼ばれた人たち

鈴木馬左也 その一 2

文・末岡照啓

官吏から住友へ

別子開坑200年当時の新居浜別子開坑200年当時の新居浜(明治23年)
惣開の船着き場から製錬所の煙突を望む
写真提供 住友史料館

宮崎県椎葉の美林宮崎県椎葉の美林

明治6年(1873)馬左也は、鹿児島県の医学校へ兄左都夫と遊学、9年3月には旧制宮崎中学を卒業した。同年6月、金沢の啓明学校へ入学したが翌年退学して、11年2月から東京大学予備門に学んだ。明治20年7月、二七歳で東京大学を卒業すると内務省に入り、22年5月愛媛県書記官として赴任した。翌年5月の別子開坑200年祭に来賓として新居浜に招かれたが、これが住友との最初の出会いであった。
明治22年8月大阪府書記官として転任すると、10月には大阪住友本店での200年祝賀会に招かれた。席上、馬左也は旧知のこととて挨拶を求められ、「住友家の伊予の銅山経営は、政にはあらざるも、徳を以てせらるるが故に、県民は之に悦服せるなり」と、讃辞を述べた。すでに初代総理人広瀬宰平は、住友の事業精神について「一意殖産興業に身を委ねて、数千万の人々と利益を共に分かち合う」と宣言しており、二代伊庭貞剛も「住友の事業は、住友自身を利すると共に国家を利し、且つ社会を利する底の事業」との方針を執っていた。官界にあった馬左也も、愛媛県や大阪府に在勤中、それを肌身で感じ取っていた。当時、一五代家長友純(ともいと)と総理事伊庭貞剛は、同志を広く世間に求めており、鈴木は将来を託するに足る人物と映った。
明治29年5月、鈴木は住友家の懇請にたいし、「自分は役人で商売のことは何一つ知らない。(中略)徳を先にし利を後にする。徳によって利を得る、それでよろしければお受けする。」と自説を披瀝したが、まさしくこれは住友家の事業方針でもあった。ただちに鈴木の入社は決定し、大阪本店の副支配人となった。馬左也ときに三六歳、働き盛りであった。伯母の杣子は「町人になりたくないと一夜嘆き明かした」というが、もとより馬左也は窮屈な官界に見切りをつけ、住友の事業精神に引かれてやってきたのである。のちに馬左也は、江原万里(住友から東京帝大助教授を経て、キリスト教の宗教家となる)に官界への失望を告げ、「あの時住友に入った故に、自分は幸に自己を枉(ま)げることなくやってこられた」と述懐している。

植林と煙害対策

大塚小郎(林業所主任)宛て馬左也書状(大正9年) 「林業ハ国家の大計ニ干与する」と記している。大塚小郎(林業所主任)宛て馬左也書状(大正9年)
「林業ハ国家の大計ニ干与する」と記している。
写真提供 住友史料館


明治32年(1899)1月6日、馬左也は別子鉱業所支配人となったが、道義に基づいた経営方針を執った。同年8月別子は未曾有の風水害によって、514人の尊い人命と全施設を喪失した。鈴木はその善後策に陣頭指揮を執ったが、その原因は銅製錬による山林の濫伐であった。馬左也は、伊庭の別子大造林計画を継承し、「鉱山は国土を損する仕事故、国土を護ってゆく仕事をする必要がある。云ひ換ふれば、罪滅ぼしの為めに・・・・・・それには山林事業が最も適当」と述べ、四国の別子山はもとより、全国に植林を敢行する決意を固めた。大正6年(1917)から北は北海道の北見から、南は九州宮崎県の椎葉村まで山林事業を起こし、また朝鮮の国有林にまで植林を敢行した。のちに鈴木は「住友の林業は百年の計をなさんとするもので、私は山林を住友最後の城郭と致したい。」と述べている。

いっぽう、新居浜の煙害問題解決のため、沖合20キロの無人島四阪島(しさかじま)に製錬所を移し、明治38年1月から本格操業を開始したが、煙害はなくなるどころか、風向きの関係で遠く対岸の今治・壬生川(にゅうがわ)付近にまで拡散したのである。明治42年、住友と農民代表の協議会が尾道で開催されたが、席上馬左也は「住友家においても除外方法については熱心に研究し居り(中略)、其の方法発明せらるるに至らば、住友家においては除害設備は少しも厭(いと)う所にあらずして、仮令(たとえ)煙害に対する損害を弁償する額以上をも支出して施設する覚悟である。」と、煙害の根本解決を宣言した。こうして、大正2年9月開設されたのが住友肥料製造所(現、住友化学)であり、亜硫酸ガスから硫酸を製造し、過リン酸や硫安などの肥料を製造した。鈴木が目指したのは農工並進であった。その後も煙害の完全除去の研究が進められ、昭和14年(1939)脱硫中和工場の完成で達成された。

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