2016年度「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」1億370万円余、「25周年記念助成」2,158万円余、および「アジア諸国における日本関連研究助成」4,891万円余の助成を決定

1.2016年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」「25周年記念助成」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、25年に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
2016年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内125件、海外42件)を頂きました。
今年度は弊財団の創立25周年を記念して国内・海外文化財の助成対象を増やし、助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 35件、助成金総額 6,934万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):695件・14億5,889万円>

【例】

真光寺(しんこうじ)保存組合 代表 岩本 勝介(熊本県阿蘇市)
木造観音菩薩立像修復事業(平安時代)
助成金額52万円

真光寺ゆかりの観音菩薩像と伝えられている本像は、2016年の熊本地震によって祭壇から転倒し、左肩先等が分離するなどの大きな損傷が生じました。阿蘇地域に伝わる希少な平安後期の観音菩薩像としてその価値は高く、地域住民によって篤く加護されていることからも、修復後は阿蘇地域の復興のシンボルとして位置付けられるため、早急な修復が望まれています。

2.海外

助成対象 13件、助成金総額 3,436万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):289件・6億9,060万円余>

【例】

ネルソン・アトキンス美術館 上席学芸員 コリン・マッケンジー
ネルソン・アトキンス美術館(アメリカ)所蔵 「十三仏図」の修復
助成金額27,000ドル

1933年に開館したネルソン・アトキンス美術館は、約35,000点の世界中の美術品を幅広く所蔵し、うち日本美術品は2,000点以上を所蔵しています。「十三仏図」は、14~15世紀頃の作品で、人の死後、追善供養のため初七日から三十三回忌までの忌日を司るとされる十三仏が描かれています。現状は、縦の皺、折れ、ひび、絵の具の剥落など損傷がひどく、展示出来ない状態であり、修復が急がれます。

3.25周年記念

助成対象 8件、助成金総額 2,158万円余

【例1】

(公財)徳川黎明会(とくがわれいめいかい) 徳川美術館(愛知県名古屋市)
婚礼調度類(徳川光友夫人千代姫所用)修復事業(江戸時代)
助成金額225万円

寛永16年(1639)、徳川三代将軍家光の長女千代姫が、尾張徳川家二代光友に婚嫁する際に携えた婚礼調度類です。今年度の修復対象は、初音蒔絵調度 書棚((はつねまきえちょうど しょだな)(棚囲い・七宝繋(しっぽうつなぎ))で、『源氏物語』に意匠をとり、卓越した技術を用い、あらゆる蒔絵技法を駆使した優品とされています。しかしながら、経年劣化を免れることはできず、早急な修復が必要な状況にあります。

【例2】

東京文化財研究所 研究員 前川 佳文
バガン遺跡群(ミャンマー)寺院祠堂壁画の保存修復
助成金額300万円

バガン遺跡群は、11~13世紀パガン王朝の仏教遺跡群です。修復助成対象は、3,000ある仏塔寺院の中のひとつローカテイパン寺院の南壁画で、12世紀前半に釈迦八相図を題材に描かれたものです。現状は、表面全体に汚れがあり、コウモリの糞や虫の巣による被害、漆喰層の亀裂、剥落等が発生しています。2016年8月24日の地震による大きな縦の亀裂も生じているため、修復が急がれます。

2.2016年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 66件、助成金総額 4,891万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額:1,417件・10億8,045万円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」に助成を行ってまいりました。今年度は、2016年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった565件の中から、助成先を決定いたしました。

【例】

米に含まれるヒ素の無害化を通じたバングラデシュの社会、経済開発に対する日本の役割
助成金額 約113万円
バングラデシュ パトゥアカリ科学技術大学 農学部土壌学科 准教授 モハメド・サイフル・イスラム

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