大阪府立中之島図書館 前編

商都の大図書館

大阪府立中之島図書館

大阪府立中之島図書館

所在地
大阪市北区中之島1-2-10
開館時間
月曜日~金曜日 午前9時~午後8時
土曜日 午前9時~午後5時
休館日
日曜日、国民の祝日・休日、
3月・6月・10月の第2木曜日、
年末年始
URL
http://www.pref.osaka.jp/site/nakato/

知事と住友の熱意で誕生

大阪府立中之島図書館
第15代住友吉左衞門
第15代住友吉左衞門

大阪府立中之島図書館は、官庁や企業が集中する大阪の中之島にある。石造りの三層、銅葺きのドームを持ち、威厳に満ちたギリシャ風建築は、周辺の高層ビルと好対照をなしている。
同図書館は明治37年(1904年)の開館。明治中期、国民の知識レベル向上に寄与するとして、全国で図書館創設の機運が高まっていたが、大阪には本格的な図書館がまだなく、教育関係者や文化人から設立を求める声が挙がっていた。しかし、インフラの整備を急いでいた府や市にとって、創設費用を捻出するのは容易ではなく、しばしば議題に上ることはあっても、計画に移されるには至らなかった。

明治32年(1899年)、当時の大阪府知事、菊池侃二(きくちかんじ)は「大阪府教育10ヵ年計画」を立てて、議会に提案。提案書のなかで菊池は、明治維新以来、大阪においても高まっている向学の意志を、施設の未整備のために挫折させてはならない。わけても学校外の教育として図書館の創設は一刻も早く実現しなければならないと力説した。

この提案が報じられると、すぐに反応を見せたのが、第15代住友吉左衞門友純(春翠)。図書館建設に巨額の寄付を申し出たのだ。友純はその3年前、欧米を外遊中に、シカゴでアメリカの富豪マーシャル・フィールドが100万ドルを寄付し、建築された美術館を見て、いたく感銘を受けたとされる。「持てる者は、その使命として公共有用のものを建てるべし」。シカゴでそう心に強く刻んで帰国した友純は、府が図書館の建設を検討していることを耳にし、建築費15万円、および図書購入基金5万円を寄贈することを申し出たのである。もちろん、議会は賛成者多数でこれを受け入れた。後に菊池知事は「此のことは、実に我府における空前の美挙であって府民を利することは実に測るべからざるものであろう」と述べ、友純を賞賛している。
府民の間に満ちる向学の意志に、知事と住友の熱意が交わり、待たれていた本格的図書館の創設が実現に向けて動き出すことになったといえるだろう。

近代建築の到達点

大阪府立中之島図書館

着工は、明治33年(1900年)9月。設計・監理は、住友本店臨時建築部技師長の野口孫市が担当した。友純は建築費用を寄付するだけでなく、建物を建てることをも提案していたのだ。当時、急速に規模を拡大していた住友は本店・支店の建築を急ぐため、自社のなかに臨時の建築部を置き、若い才能を多数雇い入れていた。野口はその中心人物として、友純の命を受けて西洋に赴き、1年かけて古今の建築を見聞し、理解を深めた。3年あまりの年月をかけて完成した大阪府立中之島図書館は、その知見が存分に発揮されたものとなった。ギリシャ神殿を思わせる荘厳な外観、美しいカーブを描くドームを見上げる緻密に計算された吹き抜けの空間、天然石と良質の木材、そして随所に効果的に用いられた銅が醸し出すハーモニーは、日本における近代建築の一つの到達点と評されている。

相次ぐ図書の寄贈と利用者の増加

明治37年(1904年)竣工当時の中之島図書館
明治37年(1904年)竣工当時の中之島図書館

『天下の台所』と称された大阪の中心を占める船場を控えた大型図書館には、「実学の気風や商家の丁稚などの知識向上のため」といった期待が寄せられ、終業後にも利用できるよう、開館時間は、午前8時から午後10時まで(冬期は午前9時から午後9時まで)とされた。その理念に賛同する篤志家による図書の寄贈も相次ぎ、開館時に28,020冊だった蔵書は、わずか10年で3倍強の10万冊を超えた。利用者も開館の翌年度には約10万人を数え、以後、年々増加。満員のため閲覧者を拒絶せざるを得ない状況になり、大正11年(1922年)には再び住友の寄付により本館の両翼に閲覧室を増築するに至った。設計は創建時に野口を補佐した技師長の日高胖(ゆたか)であった。その後も閲覧希望者は増え続け、大正13年度(1924年度)には年間40万人を突破している。

ビジネスマンのサポート役、古典籍の研究拠点として

現在、大阪府立の図書館は、平成8年(1996年)に中央図書館が開館したことを受けて2館体制となっている。そのなかで中之島図書館は、立地面からニーズが多いビジネス関連の図書を多数収蔵するとともに、調査相談にも応じ、今日も実学の気風に沿った運営方針を貫いている。また、開館以来蒐集してきた20万冊に上る和古書、漢籍とその関連本を蒐集するとともに、古典籍の研究拠点としての機能も有し、全国から学究の徒が足を運んでいる。

大阪府立中之島図書館 館長 野本康憲
監修者
大阪府立中之島図書館 館長
野本康憲(のもと・やすのり)
1979年4月大阪府入庁。総務部、企画調整部、商工労働部などを経て、2012年4月から現職。
大阪府立中之島図書館 司書部長 大北智子
大阪府立中之島図書館 司書部長
大北智子(おおきた・ともこ)
1979年6月大阪府入庁。平成20年~21年の府立中央図書館勤務を除き、通算30年余にわたり中之島図書館で司書として勤務。2014年4月から現職。

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