様々な領域の最前線でプロジェクトを率いる住友グループ各社社員の、
未来にかける熱い想いを紹介します。
日本板硝子が2021年8月に量産を開始した、抗菌・抗ウイルスガラス「NSG Purity(ピュリティ)」は、主に情報端末などのガラス面に貼り付けて使用する厚さ約0.3mmのガラスだ。同製品のコーティングは無機膜のため、抗菌・抗ウイルス性能が長期間持続し、耐久性にも優れている。さらに、硬く、貼り付けも容易なことから、従来のスプレータイプや、フィルムタイプの抗菌・抗ウイルス材とは一線を画す。同年6月にはSIAA(抗菌製品技術協議会)から「抗菌加工」と「抗ウイルス加工」の両認証を取得済みだ。
実は、同製品の開発は19年にスタートしている。当時はマーケティング調査を行っても、抗菌・抗ウイルスに対する消費者の意識が薄かったという。そこに新型コロナウイルスの感染が世界でまん延する。「市場で求められるはずと確信しました」と語るのは、ファインガラス事業部の和田俊司さん。20年の春先に抗菌・抗ウイルスをコンセプトにしたプロジェクトチームを本格スタートさせた。
研究開発部で、チームに参画した松田瑞穂さんは「当初は抗菌機能をメインに開発したものだったので、抗ウイルス機能を加えるために材料の組み合わせに試行錯誤の繰り返しでした」と語る。
安全な無機材料を使いながら、菌やウイルスを減少させるコーティング技術は、同社が得意とするゾル‐ゲル法をベースとしている。これは、セラミックやガラス質のコーティングを作製する材料合成法の一つだ。実質1年強の短期間で開発に成功できたのは、これまでの材料合成のノウハウと、地道なマーケティング活動からのフィードバックのおかげだ。
外食産業や公共施設のタッチパネルへの採用を提案する、マーケティング企画グループの申創さんは、「お客様から抗菌・抗ウイルスはこれからの世の中のスタンダードになるといわれて、意を強くしています」と力を込める。
「当社グループは中期ビジョンで『快適空間の創造』を掲げています。アフターコロナでも『NSG Purity』で社会に貢献していきたい」と、和田さんは抱負を語ってくれた。
SUMITOMO QUARTERLY NO.168より転載