先祖代々住み継いできた家に、今年も春の陽光が降り注ぐ。古民家特有の風格を保ちつつ、室内は明るく、断熱性の高い快適な住空間だ。
住友不動産は、リフォーム事業"新築そっくりさん(以下、本事業)"の一環として、2000年から古民家再生を手掛けている。伝統工法の高度な専門性を駆使し、施工棟数は累計4000件を超える。
「例えば耐震機能も現代の工法とは違います。伝統工法は、柱の端の中心部をくりぬいて、構造材の突起を組み込むことで震動を受け流す。不用意に構造材を切ってしまうと、機能しなくなります」と、南雲秀人さんが解説する。
「古民家の木材の多くはもともと非常に丈夫な上、長い時を経て強度が増しています。当社はこの貴重な資源を極力生かしつつ、機能性を付加します」と、山口将士さんも続ける。この特殊な工事を可能とするのが、本事業の経験と実績だ。本事業を開始して以来、12万棟を手掛ける中で得た様々な工法に関する知見から、マニュアルを作成。それを基に研さんを積み、独自の資格制度である"古民家マイスター"に認定された技術者だけが古民家再生に携わることができる。
「残すべき柱や建具を見極め、お客様の財産を守ることができるのも当社の強みです。生まれ変わったご自宅を見て、喜んでくださるとうれしいですね」と、本告玄さんが話す。
環境負荷の低減や、伝統工法の伝承につながる本事業に、今後も期待がかかる。