様々な領域の最前線でプロジェクトを率いる住友グループ各社社員の、
未来にかける熱い想いを紹介します。
経済産業省が発行する『ものづくり白書』によると、人に内在する暗黙知を主体とする能力が「技能」とされる。この「技能」は、人から人へと実際の体験を通じて継承されていくもので、ものづくり大国日本の源となる力だ。しかし、近年は製造業の8割もの事業所が技能継承に不安を抱えているという調査結果が報告されており、その解決は喫緊の課題だ。
そうした中、住友重機械搬送システムの小泉裕さんは、自身が培った溶接技能の継承に取り組んでいる。
「私の部署では、港湾などで積荷をつり下げる巨大なクレーンの構造体の組み立てと溶接をしています。普段は組長として、工程管理や人の部下に溶接を指導していますが、溶接は自分で考えることが重要な世界。部下には一つのやり方を強制するのではなく、自分で考える力を身に付けられるような指導を心掛けています」
小泉さんは溶接工として2016年には新居浜市のものづくりマイスターにも認定され、全国溶接技術競技会で8位に入賞した経験を持つ。
「ものづくりマイスターに認定されたことで、母校の工業高校から会社に連絡があり、講師として高校で後輩の指導に当たっています」
春と全国選抜高校生溶接技術競技会が開かれる夏休み期間には母校を訪れ、後輩たちの指導に当たっている。指導した生徒の中には、全国大会で最優秀賞を受賞した生徒も出た。
「生徒に教えることで自分の技術を見直すいい機会にもなっています。いずれは自分を超えるような若者を、これからも育てていきたいですね」
そう照れくさそうに語る小泉さんの顔には、技能を次の世代につなぐ確かな自信がみなぎっていた。
SUMITOMO QUARTERLY NO.160より転載