住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
産業界をリードする気候変動・生物多様性の先駆的取り組みと
防災・減災を支えるビジネスで社会課題解決に貢献
気候変動により自然災害の激甚化・頻発化が進んでいる。数十年に一度といわれる大規模な風水災が2018、2019年と立て続けに発生し、業界全体での保険金支払額は2年連続で1兆円以上に達した。災害への対応は損害保険業界にとって極めて重要なテーマであり、三井住友海上は「地球」と「人」の双方の観点から多彩な活動を繰り広げている。
同社では2021年、気候変動への対応を、全社を挙げて取り組むべき重要課題と位置付け、経営企画部内に対策チームを立ち上げた。さらには取り組みを推進する過程で、気候変動は様々な「地球の不調」の一部であり、根本にあるのは自然資本への過度な依存だと定義。その自然資本を支える生物多様性にも取り組みを広げるべきだとの社内合意が醸成されたことで、2022年1月からは生物多様性の視点も加えた具体的な検討を始めている。
実は同社の自然資本に関わるサステナビリティの取り組みは、早い時期から始まっている。2005年にインドネシア政府と共同で熱帯林再生プロジェクトを開始し、植林や地域経済活性化、住民への環境教育を行ってきた。この取り組みは現在も継続している。
また、2007年から「企業が語るいきものがたり」というシンポジウムを毎年開催。これが契機となり、生物多様性保全と生物資源の持続的利用を共同研究する場として翌2008年に発足した「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」では、発足時から現在に至るまで、同社および同社の持株会社であるMS&ADインシュアランスグループホールディングスが会長会社の立場で活動をリードしている。JBIB内の企業緑地での生物多様性保全について研究するワーキンググループからは、事業所の生物多様性への対応を評価する認証制度(ABINC認証)も誕生した。また、東京・駿河台本社の敷地内は緑化率4割を超え、在来種の樹木や鳥などの生物多様性に配慮した緑地にしている。
そのほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版として2021年に発足したTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)には、日本からただ一人のメンバーとして同社のグループ社員が選ばれた。TNFD推進を担う国内協議会の事務局もMS&ADインシュアランスグループホールディングスが務めている。
このように多様な側面から気候変動・生物多様性保全活動を展開している同社だが、これらは社会貢献としてだけでなく、損害保険会社のビジネスとしても取り組みを進めている。災害が発生したら保険金を支払うというこれまでのビジネスモデルを超えて、災害による社会的損失を抑制するための新規ビジネスやサービスを提供している。
地球環境との共生、すなわち地球と人との直接的な関わりという観点では、防災・減災が欠かせない課題であり、同社は防災・減災をサポートする保険商品・サービスの数々を発売している。例えば、グループ会社のMS&ADインターリスク総研と共同開発した「防災ダッシュボード」は気象・災害データ×AIによる自治体向けの防災・減災支援サービスである。災害リスクにつながるリアルタイム気象データ、30時間以上先の洪水予測、発災後のAIによる被害推定をダッシュボード上にわかりやすく一元的に可視化することで、地域社会における防災・減災対策を支援する。また、風水害などに伴い道路の確認が必要になるが、自治体や道路修繕業者の人材不足で点検が行き届かなくなる可能性もある。同社がアーバンエックステクノロジーズとの協業で提供する「ドラレコ・ロードマネージャー」は、小売・物流事業者等の車両に搭載されたドライブレコーダーのデータを活用して路面情報を収集・可視化するもので、道路点検を支援し、損傷箇所の早期修繕で災害を未然に防ぐ。
一方、不幸にも災害に遭遇したとき、被災者は生活再建支援金や税の減免等の行政支援制度を利用するために、自治体の調査を受けて罹災証明書を取得するケースがあるが、災害の頻発化・甚大化等により、自治体の業務が逼迫し発行までに時間を要する等が社会課題となっている。同社はここに着目し、水災時の損害調査情報を同社から自治体に提供して、罹災証明書の迅速な発行手続きを支援するサービス「被災者生活再建支援サポート」の提供を業界で初めて開始した。
同社では今後も、気候変動・生物多様性保全に関わる活動で企業をリードするとともに、ビジネスの観点でも防災・減災につながる取り組みに力を入れていく考えだ。