住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
リソースアグリゲーション事業に参入
「仮想発電所」技術を中核に再エネの需給調整を実現
カーボンニュートラルは、地球と共生しながら持続的な経済成長を実現するための鍵を握るキーワードだ。その中でも温室効果ガス排出の大半を占めるエネルギー分野の施策は、カーボンニュートラルの目標達成を大きく左右する。
そうした中でNECは、自社のビジネスを通じて社会課題を解決するために「カーボンニュートラル関連事業」に力を入れて取り組んでいる。具体的には、エネルギーマネジメントの効率化・最適化を実現するリソースアグリゲーション事業、脱炭素経営ソリューションの商品開発、サーキュラーエコノミー分野の事業化の探索である。2021年10月には、電力の需給調整市場にリソースアグリゲーター(RA)として参入し、エネルギー分野のカーボンニュートラルに向けた施策を打ち出した。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を進める中で、カーボンニュートラルの実現と企業の競争力向上を両立させていく。
NECがリソースアグリゲーション事業に本腰を入れる背景には、エネルギー分野の脱炭素化が喫緊の課題であることが挙げられる。再生可能エネルギーの比率を高めることは脱炭素化に貢献する一方、再生可能エネルギーは天候で発電量が大きく変動し、需給のバランスを取りにくいため、国内での普及が進んでいないという現状に直面しており、こうした社会課題に対してリソースアグリゲーション事業で解決方法を提案する。
具体的な課題は大きく3つある。需要と供給を一致させる「調整力の確保」、火力発電などから再生可能エネルギーに転換する「調整力の脱炭素化」、供給側の変動に合わせたディマンドリスポンス(DR)などの「需要の最適化」である。これらの解決に向けては、再生可能エネルギーの主力電源化を進め、電力供給量の変化に合わせた需要量の高度なコントロールが求められる。NECは「仮想発電所(バーチャルパワープラント、VPP)」の技術を活用することで、需給の制御の高度化を実現し、電力設備を管理・提供するリソースアグリゲーターとして貢献する。
需給調整市場に調整力を提供するには、電力需要の動きをリアルタイムで監視し、刻々と変わる状況に対応する必要がある。そのためにはIT(もしくは予測技術)を活用した高度な制御が必要であり、これはNECが得意とする分野でもある。調整力を生み出すVPPは、太陽光や風力、事業所の自家発電設備、業務用蓄電池など多様な分散電源を仮想的に束ねて、1つの発電所に見立てたものだ。高度な制御の実現には、IoTやAI(人工知能)などの技術を活用する。
NECでは、個々のITの最新技術を提供するだけでなく、リソースアグリゲーター向けのクラウドサービスを提供している。VPPのDR対応機能やAC事業者などの他事業者とのインターフェースなどをサービスとして用意することで、需給調整にかかわる多くのステークホルダーに利便性を提供する。
需給調整市場に向けた事業に加えて、NECは自治体におけるゼロカーボンシティやエネルギーの地産地消への支援なども行っている。自治体やエリアを限定した地域内の企業の電力需要に対して、発電される再生可能エネルギーを取り込み、地産地消の形で需給を成り立たせる取り組みである。地域で発電した再生可能エネルギーやCO2フリーの電力を使い、需要と供給のバランスを見ながら、余剰があれば蓄電池に貯め、不足したら放電するといった制御を行う。NECがVPPのために蓄積した技術が活用できる分野で、今後、市場が拡大していくことを見込んでいる。
広がるリソースアグリゲーション事業によりNECは、実現を目指す世界のコンセプトとして、「循環型ICTモデル」を掲げる。リソースアグリゲーターとしてのNECと、発電設備を持つリソースパートナーを中核に、エネルギー分野の価値を循環させるモデルだ。リソースパートナーは、カーボンニュートラルに向けて自社に再生可能エネルギーや蓄電池の導入という「投資」をする。ここで導入した設備で生み出されたエネルギーの一部をNECがAC事業者を介して需給調整市場に提供し、対価として事業収益を得る。対価がリソースパートナーの事業収益につながることで、新たな脱炭素化への投資を促すという循環だ。
NECは、カーボンニュートラルを単なる投資で終わらせるのではなく、循環型ICTモデルを構築して価値を循環させて、持続可能なカーボンニュートラルの実現を目指していく。