住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
電力・環境インフラの脱炭素化を多方面から支援、
受変電設備は小型高効率化で環境配慮を追求
日新電機は、電力・環境システム事業を中核に、電気機械器具の製造・販売ならびに付帯工事を手掛けている。電力、工場、交通、水処理などの社会インフラがビジネスの中心だ。特に電力インフラでは、これまで安心で安全な電力が確保できることが最優先課題だった。ところがSDGsへの対応が求められるようになり、電力を少なく賢く使うことも同時に不可欠な課題になってきた。日新電機は、こうした環境変化への対応を電力・環境システムの側から多方面に支援している。
日新電機では、社会課題への対応の具体的な取り組みを「SPSS(Smart Power Supply Systems/スマート電力供給システム)」と名付けたソリューションとして提供している。その目的は、「環境配慮製品の拡大」「分散型エネルギー対応」「再生可能エネルギー対応」「DX(デジタル変革)の製品・事業への適用」である。従来の機器販売中心から、制御技術やソフトウエア、ネットワークなどを融合したシステムを提供するビジネスモデルへとシフトし、エネルギーへの課題を解決していく考えである。
SPSSは5つのソリューションで構成されている。工場やオフィスビルの電力の課題を解決する「SPSS-Factory」、水処理場の創エネや省エネを実現する「SPSS-Water」、発電所や変電所の電力・系統の安定化などに貢献する「SPSS-Grid」、離島など隔離された環境のエネルギー管理を推進する「SPSS-Island」、家庭市場向けのエネルギー最適化を進める「SPSS-Home」である。SPSS-Gridはエネルギーの供給側、その他の4つは需要側での課題解決に向けたソリューションになる。
こうしたSPSSの中で大きな売上を占めているのが、工場やオフィス向けのSPSS-Factoryだ。カーボンニュートラルやCO2排出量削減への対応に加え、昨今のエネルギーコスト高騰への対策が求められる中、工場では6万~7万ボルトといった特別高圧の電力を利用することが多い。こうした特別高圧の受変電システムでは国内トップクラスのシェアを持つ日新電機が、環境配慮型のシステムを提供することで課題への対応に貢献できるというわけだ。
受変電システムでは、すでに小型化を追求し、短工期で設置でき、環境にも配慮した次世代変電所「Advanced-XAE変電所(A-XAE変電所)」を提供している。既存のXAE変電所との比較で、設置スペースは25%縮小、現地施工期間の延べ日数は27%短縮、変電所建設時のCO2発生量も13.5%削減と、工期における環境負荷を軽減した。同時に損失を減らして高効率化を実現し、ランニング時の低コスト化、省エネ化にも貢献する。今後はさらに環境配慮の要素を盛り込んだ「環境配慮変電所システム」の販売・展開を計画している。
変電所システムの環境配慮の進展には、技術的ないくつかのポイントがある。1つは特別高圧で受けた電力を工場内で利用できる電圧に変える「変圧器」の効率化だ。変圧器には一定の損失があり、日常的に電力を無駄に消費してしまう。日新電機では材料や構造を工夫することで損失を減らした超高効率の変圧器を開発し、市場に投入している。例えば10MVAの変圧器を30年前のものから超高効率の変圧器に更新すると、損失を半減でき、CO2排出量も144トンから71トンへと激減できると試算する。変圧器は数十年も利用する更新頻度の低い機器だけに、超高効率の変圧器にいち早く更新することで環境負荷の軽減が持続的に可能になる。
この他にも、変電所で使う電力用コンデンサの損失を低減することで、低コスト化やCO2削減に貢献する。変圧器の中の絶縁用の油を鉱油から植物由来の油に変えることで、万が一漏出しても自然分解して環境に影響を与えないような対策も施す。
SPSS-Factoryでは、太陽光など再生可能エネルギーの有効活用のソリューションも提供する。工場などに設置した太陽光発電の電力の有効活用には蓄電池を用いる。天候の良い日や休業日に発電して余った電力を、蓄電して必要なときに使えるようにするものだ。さらに、事業所間などで電力を融通する自己託送もソリューションとして対応する。日新電機が培ってきたエネルギーマネジメントの分野の技術が生かされる部分だ。また、AIの適用も進めている。太陽光の発電量予測や、需要予測、各種電源設備の最適制御、水処理の水質制御などにAIを活用する取り組みだ。
日新電機は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた新中長期計画「VISION2025」を策定している。そこでは、2050年の「目指す姿」を規定し、「ゴール」から逆算して道のりを切り開く考えだ。SPSSの各ソリューションもそうした考えに則り、エネルギー効率化、再エネ、創エネの活用を含めて、顧客のニーズを汲み取りながら、最適なソリューションを届けていく。