住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
中小製造業の課題を解決するクラウドサービス
IoTでの可視化と専門家のアドバイスで改革
各種ビル建造物の電気・空調設備、既存ビルのリニューアル、工場プラントの計装設備、情報、通信、環境関連、電力供給設備など、国内外の幅広い分野でインフラ基盤の創造に取り組む住友電設は、総合エンジニアリング企業として社会インフラ構築の一翼を担う事業を展開することで、社会に貢献してきた。
2023年4月からサービス提供を開始した「グロサポ(Growth Support Service)」は、中小のものづくり企業の課題を解決する成長支援サービスだ。製造業の工場での生産等に関するデータのうち未活用のデータを可視化し、データの具体的な活用方法を中小企業経営のコンサルタントが定期的にアドバイスを行う。IoT(モノのインターネット)を活用した可視化システムと、専門家によるアドバイスをパッケージにして提供する点が特徴だ。
住友電設は2020年3月に情報通信システム事業部の下に新規事業推進室を立ち上げ、製造業が抱える様々な課題を解決するサービスを検討してきた。その中で、日本の中小製造業は大きく3つの課題を抱えていることが浮き彫りになった。
1点目が「工場の現状を事実として具体的に把握できていない」「データを成長に生かせていない」というデータを活用した課題認識の不足。2点目が「人材が育たない・人材が不足している」「ITの必要性は認識しているが、社内にIT人材がいない」といった人材育成やデジタル・トランスフォーメーション(DX)を実現するDX人材の不足。そして3点目が「IT/IoTの推進に向けて効果的な投資方法が検討できていない」「何から始めればいいかわからない」といった経営計画に関する課題だ。
日本の製造業は99%以上が中小企業で、原料高騰や労働者確保の問題、海外との競争の中でさらなる効率化や生産性の向上が求められている。そのためにはDX推進が不可欠だが、中小企業にとどまらずあらゆる企業でIT人材が不足していて、課題は把握できていてもどのように改革を進めればよいか経営判断ができない企業は多い。
そこで住友電設は、ウイングアーク1st、テクノ経営ウェブソリューションズと共同で、中小製造業向けの成長支援ソリューション「グロサポ」を開発した。住友電設が顧客の窓口としてサービス全般の提供やデジタルでの生産活動記録(デジタル化)のサポートを行う。ウイングアーク1stはデータを可視化するBIダッシュボード「MotionBoard」の開発・提供やクラウドの運用・保守を担う。そして製造業のコンサルティングを行うテクノ経営ウェブソリューションズがリモートアドバイスを通じて、DXの促進・定着化のためのサポートを担当する。
グロサポを利用することにより、IoTを活用して工場における生産活動をデジタル化してデータを取得、状況を可視化することで、改善につながるデータ活用を実現する。経営者が工場の実態を把握するだけでなく、現場で何がボトルネックになっているかを顕在化して収益力を高めることにつなげる。こうしたデータを基に月2回のオンラインミーティングを実施して、継続的に改善活動を維持する生産改善アドバイスを行う。
データを取得するにあたっては、工場設備の改造は必要なく、センサーを後付けで設置するので、製造工程を止めることがなく生産品質に影響は出ない。取得したデータはクラウドに集積されるため、スピーディーなシステム構築と契約企業のシステム維持のための負荷を軽減することも可能だ。
提供されるグロサポのダッシュボード画面には改善に必要なノウハウが盛り込まれており、センサー設置後すぐに状況を確認できるようになる。製造業の改善に関する知見を持つコンサルタントがアドバイスを行うので、課題に対する最適な改善アプローチと他社の改善事例を知ることができるのも特徴だ。
労働者不足が顕在化するなか、多くの中小企業は人材獲得や育成に苦労している。契約企業はサービスの利用を通して改善ノウハウを享受でき、早期に改善の成果が出せるため、工場現場の成功体験を積み重ねることが可能だ。これにより、改善担当者のモチベーション向上や職場の改善風土を醸成することができる。
住友電設グループは企業理念として「豊かな社会を支える快適な環境作りを事業目的とし、社会の繁栄に寄与します」を掲げている。様々な課題を抱えた中小の製造業の課題を解決し、持続可能な社会構築に貢献するとともに、住友電設グループ自身の中期的な企業価値の向上を目指している。