住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
全国各地の宿泊事業者へのファイナンスサポートから一歩踏み込み、地場企業の事業パートナーとして、歴史的建造物の再生を通じ地域活性化に貢献
SMFLでは、ネクストビジネス開発部を主体に新規事業の開発に取り組んでおり、その中で注力分野の一つとして地方創生を位置付けている。同社が地方創生に取り組み始めたのは2015年ごろのことだ。
それ以前には、地方の中小宿泊事業者をファイナンスによりサポートしてきた。そうした取り組みを通じ、お客様は宿泊業を営むだけでなく、その地域で幅広く行政や観光にも携わっており、地域活性化全般に対して悩みを抱えているという実態が浮かび上がってきた。
地域の悩みをうけ、ファイナンスによるサポートから一歩踏み込み、地方創生事業にパートナーとして参画した最初のケースが、福岡県太宰府市での古民家宿泊事業だ。2016年、太宰府市の観光課題解決にSMFLも参加してほしいという声が掛かった。太宰府市には年間約1000万人の観光客が訪れながら、宿泊施設が少ないために観光客の滞在時間が短いという課題があり、太宰府市にある利活用されていない空き家や古民家を活用する構想が持ち上がっていた。SMFLは、これを地域活性化へ貢献する機会と捉え事業参画を決めた。
最終的には、地域の有力企業である西日本鉄道株式会社、株式会社福岡銀行などと共同で出資し、2019年1月に株式会社太宰府Co-Creationを設立、同年10月に、古民家宿泊施設「HOTEL CULTIA太宰府」を開業。2021年3月には新たに追加2棟をオープンした。
続いて奈良県では、子会社であるSMFLみらいパートナーズ株式会社を通じて、株式会社南都銀行、歴史的建造物など地域資源を活用した分散型宿泊施設を全国に展開する株式会社NOTE(以下、NOTE)と共に奈良古民家まちづくりファンド投資事業有限責任組合を設立している。同ファンドのサポートで、1689年創業の醤油蔵元マルト醤油(1949年閉業)を再生し、2020年8月に古民家ホテル「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」を開業。醤油醸造も再開し、2022年3月から醤油の販売も開始している。
秩父市も、太宰府市と同じような観光に関する悩みを抱えていた。秩父市は、自然環境に恵まれ、秩父夜祭などの文化が息づき、秩父札所34カ所で知られる多くの神社仏閣が残り、歴史的にも価値のある地域だ。しかし、観光客は多いものの、宿泊施設が足りず、通過型の観光地となっていることが課題だった。
秩父地域のさらなる魅力の向上を図るべく、2022年8月、埼玉県秩父市の西武秩父駅周辺の古民家3棟が、分散型宿泊施設として生まれ変わった。リノベーションされた古民家は「小池煙草店(登録有形文化財)」と「宮谷履物店(小池煙草店に併設)」、「マル十薬局」。小池煙草店と宮谷履物店は昭和初期に、マル十薬局は明治初期に建てられ、いずれも長く街のランドマークとして市民から親しまれる存在であった。秩父エリアは古くから、秩父神社や武甲山を中心に信仰を集め、巡礼の地として栄えてきた。そうした歴史や伝統を背景に、新たな施設の名称は「NIPPONIA 秩父 門前町」とし、歴史的建造物の活用による観光振興や地域活性化を目指していくことになった。
今回の事業は、秩父エリアの賑わい創出と持続的な地域活性化を目的に設立された株式会社秩父まちづくり(以下、秩父まちづくり)が主体となり、2020年から進められてきた。この秩父まちづくりに、SMFLは、不動産事業の株式会社西武リアルティソリューションズ、観光地域づくり法人の一般社団法人秩父地域おもてなし観光公社、NOTEと共同出資し、パートナーとして事業に参画している。
秩父まちづくりは、今後も秩父の里山エリアや奥山エリアも視野に入れた事業展開を予定しており、秩父独自の歴史や文化に触れ、より深く秩父を楽しめる観光まちづくりを進めていく。
SMFLの地方創生の取り組みは、地域に根ざした事業として、地域の歴史・文化を尊重したサステナブルな地域社会の発展に貢献していく。