住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

住友金属鉱山×サプライチェーン

先住民との対話を通じて理解を深め、鉱物資源採掘による産業や社会の発展に寄与する

 サプライチェーン
ESGが企業価値を測る重要な要素となったことで、企業はグループ企業や関連会社、原料調達先なども含め、製品・サービスのサプライチェーンにおけるさまざまな課題への対応を求められている。サプライチェーンにはCO2や汚水、有害物質の排出、森林破壊、海洋汚染といった環境への影響はもちろん、調達先の人権問題、労働環境、さらには企業ガバナンスなど多様な課題が存在する。こうした課題への適切な対応を行わず、情報開示などを怠ると、ひいては自社の事業に悪影響を被ることになる。住友金属鉱山では、鉱山開発など事業によって影響を受ける可能性がある先住民との対話や、その伝統と文化の理解を通じて相互に尊重と協調を深めながらビジネスを進めていく。

日本で最も歴史のある企業の一つである住友金属鉱山は、銅の鉱山開発や製錬など住友グループの源流の事業を受け継ぐ非鉄金属企業だ。現在は世界各地で鉱山開発、製錬を行うほか、電池材料や機能性材料の生産、素材の提供を通じて産業や社会の発展に寄与している。非鉄金属の資源確保から高機能材料の提供までを行う、資源・製錬・材料の「3事業連携」は、世界的にもユニークなビジネスモデルだ。

住友金属鉱山では、「『世界の非鉄リーダー』を目指す」という長期ビジョン実現に向けて、2020年に「2030年のありたい姿」を策定した。2030年に向けて取り組むべき経営課題の観点も含め11個のマテリアリティ(重要課題)を設定し、それと関連するSDGsとして特に目標12「つくる責任 つかう責任」を果たすことを最重要課題と定めている。

社会のさまざまな場面で活用される鉱物を確保し、安定的に社会に供給していくことで、持続可能な社会の発展に貢献していくには、サプライチェーンの上流に当たる天然資源である鉱物を採掘する鉱山開発や金属製錬が欠かせない。資源が存在する地域に居住する先住民との協調や連携は不可欠であり、先住民の歴史や伝統、文化を理解した上で対話を続けていく必要がある。そのためマテリアリティの一つに「先住民の権利」を掲げ、「先住民の伝統と文化を理解し尊重する企業」という企業としてのありたい姿を設定した。

また以前から児童労働および強制労働の防止を掲げていたグループ人権方針について、より国際規範に沿うよう2022年6月に改正。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を支持し、「従業員」「地域住民・先住民」「サプライチェーン(その従業員を含む)」という3領域に特に重点をおいて人権尊重を推進していくことを明記した。この人権方針では、国連総会で2007年に採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(UNDRIP)を参照する国際規範の一つとして挙げている。先住民族の権利回復を掲げるこれらの国際規範を参考に、住友金属鉱山は地元行政などとも協力しながら、先住民の伝統と文化を理解した上で対話を続け、影響の回避を優先して慎重に事業を進めていく。

具体的な取り組みとしては、2013年にフィリピンで操業を開始したグループ会社であるタガニートHPALニッケル社(以下、THPAL)では、その地域で伝統的な生活・文化を営んできた、先住民の人々のための小学校や住宅、集会所を建設。創作民芸品や農作物の交換所も開設して、生計を立てていけるよう支援を続けている。

小学校の校庭で子供が遊んでいる様子
小学校では先住民独自の言語の教育も行っている。また、先住民も含めた地域住民を対象に、医療支援や奨学金の給付にも取り組んでいる。
先住民がつくったカラフルな創作民芸品
先住民がつくったカラフルな創作民芸品。
2021年にTHPALが支援し開設した交換所では、民芸品や農作物をコメや調味料、衣類などの生活物資と交換している。

2017年からはカナダで現地鉱山会社のアイアムゴールド社と共同で進めているコテ金開発プロジェクトに参画。開発により影響を受ける二つの先住民団体が主催する文化研修会などに参加して、継続的な対話を実施。開発に向け相互の理解を深めることに注力し、最終的に先住民団体との同意であるImpact Benefit Agreement(互恵に関する同意)を締結。この同意のもと先住民の雇用創出などに取り組んでいる。

先住民に縁のある湖に集まった先住民と開発企業の社員の写真
開発予定地に位置する、先住民に縁のある湖に集まった先住民と開発企業の社員。
この湖と同じ水表面積を持つ湖を建設し、生息生物をその湖に放流するなど生態系の維持にも取り組む。

また、現場での対応だけでなく、2021年からは先住民の伝統と文化についてグループ社員の理解を深めるために動画を作成し、eラーニングとして展開。2021年度末時点で国内外合わせて約6000名の社員が受講した。

みんなで学ぶ「先住民」のこと 住友金属鉱山 2021年6月制作
先住民に関する社内教育動画第一弾「みんなで学ぶ『先住民』のこと」の画面。
尾本惠市氏(東京大学名誉教授)、西原智昭氏(星槎大学教授)、野口栄一郎氏(NGO「タイガフォーラム」メンバー)などの専門家と対話を続け、公正な資料になるよう指導を仰いだ。

1590年に京都において銅製錬・銅細工で創業した住友金属鉱山は、430年以上にわたる歴史の中で築き上げてきた「住友の事業精神」に基づき、事業を通じた社会課題の解決に取り組んできた。経営理念に「地球および社会との共存」と「人間尊重」を掲げ、鉱山開発など事業により影響を受ける先住民との対話と相互理解を深めながら、資源の確保と非鉄金属素材や機能性材料の安定供給を通じて企業価値の最大化を目指し、持続可能な社会の形成に取り組んでいく。

住友金属鉱山株式会社
https://www.smm.co.jp/
430年にわたる住友の源流事業である銅製錬、鉱山業を今に受け継ぐ住友金属鉱山は、銅・ニッケル・金などの非鉄金属を中心に、資源開発から製錬、社会のイノベーションを支える高機能材料などの開発・生産まで、ものづくりの最上流から身近な製品材料まで一貫した事業を展開しています。
私たちは「資源ビジネス」「製錬ビジネス」「材料ビジネス」という3分野をコアビジネスと位置付ける世界的にもユニークなビジネスモデルとそれぞれの分野での長年の経験に裏づけられた技術力と研究開発力を活かし、世界の非鉄リーダーをめざしています。

各社が取り組む社会課題

脱炭素 パネルイメージ

脱炭素

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介します。

サプライチェーン パネルイメージ

サプライチェーン

サプライチェーンのグローバル化や複雑化に伴い、企業にはサプライチェーン上で発生する課題への適切な対応が求められています。

新しい働き方 パネルイメージ

新しい働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が従来型の働き方を見直したことで、働き方改革が加速しています。

健康 パネルイメージ

健康

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって従業員の健康への配慮はよりいっそう重要なテーマとなっています。

気候変動 パネルイメージ

気候変動

地球温暖化の進行はビジネス上の深刻なリスクを引き起こす可能性があります。そのため、企業には中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められています。

モビリティの電動化 パネルイメージ

モビリティの電動化

環境負荷軽減への対応や社会的ニーズの高まりとともに、モビリティの原動力がガソリンから電気へと置き換わりつつあります。

コミュニティ パネルイメージ

コミュニティ

人と人のつながりであるコミュニティを再生・再構築することで社会課題解決に向き合う動きが活発になっています。

貧困 パネルイメージ

貧困

子どもの貧困問題への対応が喫緊の課題になるなど、現代の日本においても貧困は深刻な社会課題の一つとなっています。

次世代の育成 パネルイメージ

次世代の育成

日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっています。

先端医療 パネルイメージ

先端医療

近年における医療の飛躍的な進歩には、大学等の研究機関はもとより、企業による最先端技術への取り組みが大きく寄与しています。

地産地消 パネルイメージ

地産地消

再生可能エネルギーを生かし、地産地消を通じて脱炭素に貢献しながら産業振興も目指す取り組みが各地でスタートしています。

食品ロス パネルイメージ

食品ロス

世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンが毎年廃棄されているとされ、食品ロスの解決は一刻を争う課題になっています。

地球環境との共生 パネルイメージ

地球環境との共生

人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべきさまざまな課題について、各社の取り組みを紹介します。

強靭性・回復力 パネルイメージ

強靭性・回復力

自然災害だけでなく、さまざまなハザードがあり、その姿は時代とともに変化し、激甚化もしています。それに負けない強靭性や回復力を持つしなやかさが求められています。

地方創生 パネルイメージ

地方創生

地域の資源を生かして産業を強化することで、地方の人口減少を克服し、持続的な社会を創生する取り組みを紹介します。

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