住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
被災地域復旧のため、災害廃棄物の受け入れ処理に取り組む
日本では地震が頻発するほか、台風などの自然災害も近年の気候変動で増えている。そんな中、住友大阪セメントは、災害時に発生する廃棄物を積極的に受け入れ・再利用し、社会に貢献する循環経済を築いている。
災害大国・日本では、災害によって発生する膨大な量の災害廃棄物の迅速な処理が被災地域復旧の上で大きな課題になっている。
これに応えるため、住友大阪セメントグループは全国5カ所のセメント工場で災害廃棄物を受け入れ、セメントの原料や製造工程で用いる熱エネルギーとして利用している。
セメント工場は製造工程で廃棄物をほぼ発生させないことが特徴であり、日本のセメント会社は、廃棄物を極力発生させないという理念の下、セメント工場を運営している。国内で排出される廃棄物等は年間5億4800万tに及ぶが、そのうちセメント業界の最終処分量はわずか500t以下である。
住友大阪セメントが災害廃棄物の受け入れに注力し始めたのは2011年の東日本大震災からだ。災害廃棄物は一般ゴミと同様に、被災した自治体の清掃工場で焼却処分するなど自区内処理が原則。自区内中で処理できない廃棄物は自治体外に運び出して委託して処理するが、大規模な広域災害だった東日本大震災では災害廃棄物も膨大な量に上り、地元自治体では処理できなかった。そこで、住友大阪セメントも震災がれきなど約10万tの災害廃棄物を受け入れた。
その後、2015年に茨城県常総市の鬼怒川が氾濫した関東・東北豪雨では水没した備蓄米や畳約8000t、2016年の熊本地震では熊本県や市の木くず約1万8000t、同年の台風10号では岩手県久慈市の木くず約1000tを受け入れた。さらに2018年の西日本豪雨では木くずや土砂など4万tを、2019年の台風19号に際しても土砂、木くず、畳、稲わらなど2万8000tの災害廃棄物を受け入れ・処理をした。
災害廃棄物受け入れの目的は社会貢献だ。住友大阪セメントグループは、セメント会社の工場が近くにあって良かったと住民に思われるような、地域に根差したセメント工場を目指している。工場は八戸、栃木、岐阜、赤穂、高知と全国に五つあり、基本的に、災害発生地域から近い工場が災害廃棄物を積極的に受け入れている。
災害廃棄物の処理は、処理能力を確保するために他の廃棄物の受け入れを制限しなければならない。また廃棄物の選別・分別が必要であり、中には人手による選別が必要な場合もあるなど、かなりの処理コストがかかることもある。
セメントの製造は大きく、原料工程と焼成工程、仕上工程の三つに分けられる。災害廃棄物は原料と焼成の工程で活用される。セメントの主成分は地表に広く存在するカルシウム、ケイ素、アルミ、鉄で、原料としてもともとカルシウムは石灰石、ケイ素とアルミは粘土などを使っていた。これらはいずれも廃棄物や副産物に置き換えることが可能で、アルミは石炭灰、建設発生土・汚染土壌を、ケイ素は鋳物砂などを利用できる。
また、焼成工程での熱エネルギーとして石炭を使っているが、廃油や木質バイオマス、廃プラスチックなどに置き換えることができる。受け入れる災害廃棄物は土砂や木くず、水没した畳、備蓄米、稲わらなどで、原料や熱エネルギー用に利用する。焼成工程で発生した灰分も、全て原料として取り込まれる。また焼成は1450℃という高温なので、ダイオキシンなど有害物質の発生は基本的に抑えられている。
今後起きてしまう災害に対しては、発生後に災害廃棄物がなるべく早く受け入れられるように、近隣自治体との災害廃棄物処理協定の締結を進めている。協定があることで、住友大阪セメントは自治体の理解を得ることができ、自治体も災害発生時にはすぐにセメント工場に受け入れを依頼することができる。
住友大阪セメントでは、このように自治体との連携を取りつつ、災害廃棄物を迅速に受け入れ、被災地域の復旧を支援するとともに、災害廃棄物を再資源化して製造したセメントを、自然災害を防ぐインフラ構築のために供給することで、社会に貢献していく。