住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
工場敷地内にビオトープを造成して絶滅危惧種や希少種などを保全し、
近隣小学校で生物多様性の重要性を学ぶ出前授業を実施
日本初のプラスチック製造を行った企業として、高度な専門技術と最新の設備により次々に新しい技術を開発し、あらゆる分野で安全で快適な生活環境づくりに貢献する住友ベークライトは、「プラスチックの可能性を広げることで、持続可能な社会を実現する」というパーパスを掲げる。SDGsの概念と一致する住友ベークライトの「基本方針(社是)」に基づいた「私たちの行動指針」に示された取り組みのひとつとして、SDGs目標15にある生物多様性保全の推進 、環境負荷低減の推進や調達方針への展開を進めている。
静岡県藤枝市に立地する 静岡工場では2011年度に行った敷地内生態系調査において、雨水などの流出水を一時的に貯留する調整池で地域の絶滅危惧Ⅱ類(VU)[静岡県レッドリスト] のミナミメダカが確認された。生物多様性保全の必要性が高いと判断して、敷地面積 27万6,472m2の約5%をビオトープ「憩いの杜」として造成し、2017年3月に整備が完了した。
ビオトープ内は、ミナミメダカ以外にもカワセミやヤマトタマムシなど、多様な動植物が安定して生活できる生息空間になっている。自然環境を保全するためのビオトープであっても、そのまま放っておくと外来生物や植物が増えてしまう。そのため環境管理部が主体となって、週1回程度ビオトープの環境を点検して保全に努めている。
このビオトープで取り組む生物多様性保全の意義を地域へ発信していくため近隣地域にも公開し、近隣の小学校で出前授業を実施したり校外学習を受け入れたりするなど、地域との連携を強化している。出前授業は担当者が学校を訪問し、小学校5年生の「総合的な学習(探究)」の時間と4年生の環境教育に児童を集めて1コマ45分の授業を実施している。教える相手が小学生だけに、使う言葉には気を使っている。例えば、カーボンニュートラルについて説明する際にも、児童は植物の光合成について理科の授業で学んでいないので、「光合成」という言葉を使わず、CO2の吸収や排出がなぜ地球環境に大きな影響を与えることになるのかアニメーションなどを多用して分かりやすく説明するよう努めている。
2022年度は新型コロナウイルス感染症対策で一般の工場見学は中止したが、生物多様性保全の取り組みについて近隣小学校との対話は継続し、出前授業やビオトープを活用した校外学習などの要請に対応してきた。藤枝市内の小学校4校に理科の教材としてメダカを提供。その他にも出前授業として、ミナミメダカを含む生物多様性の保全をはじめとしたSDGsの取り組みなどを紹介した。校外学習では春・秋の2回に分けて、ビオトープへの来訪もあり、実際のビオトープを見た子どもたちに生態系保全の大切さを実感してもらうきっかけにもなっている。
小学校向けの出前授業だけでなく、住友ベークライトが主体(幹事)となって、静岡県藤枝市に工場を置く企業と協力しながら、産官学連携で「藤枝市理科教育支援プロジェクト」を行っている。藤枝市内の中学校の理科教員を対象に、各企業の事業活動や扱っている製品を紹介し、工場見学を通して理解を深めてもらうことで、理科の授業の参考になるよう次世代教育に寄与することに力を入れている。
2021年6月に英国で開催されたG7サミットで合意された「生物多様性の損失を食い止め、回復させる」というネイチャーポジティブのゴールに向け、各国は2030年までに自国の陸域と海域の30%以上を健全な生態系として効果的に保全・保護する「30by30」(サーティ・バイ・サーティ)を推進している。日本でも30by30達成に向けて環境省主導で「生物多様性のための30by30アライアンス」が発足し、住友ベークライトも参画した。アライアンスでは、国立公園等の保護地域の拡充と、保護地域以外に民間等の取り組みで保全されている地域や、自然環境の保全に貢献している地域をOECMとして認定する仕組みを検討している。住友ベークライトは、静岡工場のビオトープのOECM認定取得を目指している。静岡工場をモデルケースに他の工場や事業所での取り組みも進め、30by30達成に貢献していく。