住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
既存住宅の再生を通じて脱炭素社会の実現に貢献
耐震補強や断熱施工で安心・安全に住み続けられる住宅へ
住友不動産グループは、オフィスビル、分譲マンション、注文住宅、リフォーム、不動産仲介など、暮らしの拠点となり、都市を構成する社会資産の供給や付随サービスを提供する総合不動産会社として、事業推進と併せて地球温暖化やインフラの老朽化など社会課題の解決に取り組んできた。
日本の目指す脱炭素目標において、家庭部門は温室効果ガス排出量を66%削減するという高い目標が設定されている。目標達成には各家庭での省エネや創エネの推進が必要で、年間80万戸ほど供給される新築住宅では消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にするゼロエネルギーハウス(ZEH)化など環境性能の向上策が進んでいる。
一方で、5,000万戸超と圧倒的に多い既存住宅の省エネ推進や脱炭素化に向けた有効な議論、施策はほとんど進んでいない。住友不動産は住宅再生事業「新築そっくりさん」を通じて、既存の戸建住宅の省エネと創エネによる脱炭素化に取り組んでいる。
「新築そっくりさん」は、1995年に発生した阪神・淡路大震災で低耐震性が理由で多くの住宅が倒壊し、数多くの尊い命が犠牲になったことを踏まえ、戸建て住宅を「建替えより安く、地震に強い住宅に再生できないか」という想いから始まった。戸建て住宅の構造躯体は残しつつ、壁面や天井、床、内外装までを一新し、耐震補強や断熱施工を施して住宅性能を向上することで、安心・安全で快適な住まいへと再生するリフォーム商品だ。
2021年12月から2022年3月にかけて、東京大学、武蔵野大学と共同で「新築そっくりさん」の環境負荷の低減効果について実証研究を行い、実際の施工事例において、建替えに比べて建設時のCO2排出が47%削減されていることが分かった。今後は既存住宅の改修による建設後の省エネ(断熱等)や、創エネ(太陽光発電等)の設備導入効果を研究調査し、改修によるZEH化やLCCM(Life Cycle Carbon Minus)化についても検証していく。
新築の注文住宅でも、家庭での太陽光発電による創エネに貢献する取り組みを進めている。太陽光発電パネルと蓄電池の投資額は、一般的な建築面積の戸建て住宅に設置可能な5Kw/hのパネルと蓄電池で約200万円程度かかり、多額の出費が普及への足かせになっている。また、従来の固定価格買取制度(FIT)では、設備の設置から10年程度経過した後は顧客自らが発電設備の保守・修繕を行う必要が生じるため、故障した際に放置されることも想定され、国の再エネ発電総量の増加への課題ともなっていた。
こうした状況を踏まえて住友不動産と東京電力グループが2021年から提供を開始しているのが「すみふ×エネカリ」だ。住友不動産が施工する新築戸建て住宅に初期費用ゼロで住宅用太陽光発電設備と蓄電池を導入する。月定額のサービス料を支払うことで、発電した電気を自由に使用することができ、居住期間中は、提供する修理・交換などのメンテナンスを受けることができる。同社注文住宅の顧客において、太陽光発電設備の設置比率はサービス提供前の2021年8月には3割弱だったが、提供開始後は2022年7月実績で約7割まで上昇した。「新築そっくりさん」でも2022年4月から「すみふ×エネカリ」の提供を開始しており、既存住宅の省エネ化推進に貢献する高断熱リフォームと併せて既存住宅をZEH並みの省エネ、創エネ仕様への向上を推進していく。
昨今、太陽光発電設備用の敷地不足が問題となるなか、「すみふ×エネカリ」では、空白地帯だった既存戸建住宅の屋根への設置を推進することができる。
顧客が安心して利用することができる訴求力の高い太陽光発電サービスを提供可能とするだけでなく、普及促進により、パートナーの東京電力エナジーパートナーグループや国の再エネ発電総量の増加に貢献する仕組みとして展開している。同社は、今後も同様に関係者全体がメリットを享受できる持続可能な取組を広げながら脱炭素の推進を目指していく。