住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
次世代エネルギー領域における新たなエネルギーマネジメントビジネスの創出を通じ、
環境負荷低減と経済成長の両立でカーボンニュートラル社会の実現を目指す
地球環境の負荷低減と、経済成長。この2つのテーマを両立させながら2050年カーボンニュートラル化を進めるためのキーワードの一つがエネルギーだ。
住友商事は2021年5月発表の次期中期経営計画、SHIFT2023における重点施策として、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する次世代事業の創出を掲げた。脱炭素を達成するには環境負荷低減と経済成長を両立する持続的なエネルギーサイクルが必要であると定義し、2021年4月、新たな営業組織として「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」(EII)を新設した。
EIIは、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築によるカーボンニュートラル社会の実現に向け、異なる部門で取り組んできた次世代エネルギーに関連する事業を一組織に集約。
水素・アンモニアなどの「カーボンフリーエネルギー大型供給事業の開発・展開」、大型蓄電、水素、分散型グリーン電力、地下熱などを活用した「新たな電力・エネルギーサービスの拡大」、森林を生かした環境価値創造や、CO2の回収・再利用、排出権取引なども含めた「CO2の吸収・固定・利活用」を、重点3分野と掲げている。
グローバルで地域に寄り添った地産地消型の脱炭素社会実現を目指す上で、社内の人材・知的財産をはじめとする経営資源はもちろんのこと、社外のパートナーとも広く連携・協力することが重要であり、EIIとしても国内外の自治体が展開する脱炭素化社会の実現に向けた取り組みの支援を実施している。
例えば2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた福島県浪江町とは、水素の利活用及びまちづくりに関する連携協定書を2021年1月に締結した。同町は「2050年ゼロカーボンシティ宣言」を行っており、水素など再生可能エネルギーの地産地消を震災復興の柱として掲げている。震災から10年が経過し、復興は少しずつ進んでいるが、人口は震災前の1割程度にとどまっており、持続可能で賑わいのあるまちづくりは喫緊の課題だ。
浪江町と住友商事は「世界が真似をしたくなるエネルギーシフトを、浪江町から」とのコンセプトの下、従来の化石エネルギーから太陽光・風力発電を中心とした再生可能エネルギーと水素等の利活用への転換を進めることで合意。住友商事が知見やノウハウを提供し、水素エネルギーを活用したまちづくりと、住友商事が企画・運営するオープンイノベーションラボ「MIRAI LAB PALETTE」の機能を活かした拠点整備の2点で連携を行う。
前者については、住友商事がマルチ水素ステーションの町内への設置を検討し、燃料電池車の乗用車や自転車といった町の足となるモビリティを導入して、町民に水素を利活用する暮らしを実体験してもらうことを目指す。加えて水素エネルギー活用の事業性を調査・評価し、地元も含めた事業パートナーとの連携を進める。さらには、地域での水素製造も視野に入れている。
また後者に関しては、人が集い、情報交換や具体的アクションのハブとなる拠点作りに住友商事が設計段階から参画し、人を起点とする持続的なまちづくりを「場」と「仕組み」の両面でサポートする。
2021年11月時点で、浪江町のように2050年のCO2排出実質ゼロを表明している自治体は全国で492、表明自治体の総人口は約1億1000万人に達している。12月には住友商事と日産自動車、住友三井オートサービスが2050年カーボンニュートラルに向けて自治体の脱炭素化を支援するためのパートナーシップを提携するなど、住友商事が国内自治体に関わる取り組みはEIIを基盤としてさらなる発展を見せている。
海外での取り組みも始まっている。同社は子会社のオーストラリア住友商事を通じて、豪州クイーンズランド州グラッドストンでの水素エコシステム創造に向けた共同検討についての覚書を締結した。2030年に水素国家になることを目指す戦略を掲げて水素産業創出を推進する豪州において、グラッドストンは、産業インフラと行政による支援の面などから水素製造・販売に適した地域として注目されている。住友商事が締結した覚書では、同州政府100%保有の港湾公社やグラッドストン市政府、クイーンズランド州立大学、豪州のガス供給事業者をパートナーとして水素製造や水素利用に関する共同検証を実施し、同地で水素コミュニティ構築に取り組む。
住友商事は、水素を2050年カーボンニュートラルと持続可能なエネルギーサイクル実現に向けた重要なエネルギーと位置づけ、地産地消型の水素事業や大型の水素バリューチェーン事業、そして水素を軸としたエコシステムの構築など、水素に関連する多彩な事業を今後も加速させていく。