住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

住友建機×脱炭素、新しい働き方

主力製品の油圧ショベルの技術開発を通じて、CO2削減と働き手の安全な環境を目指す

 脱炭素
地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)、とりわけ大きな影響をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出を抑制し、GHGの実質的排出ゼロを目指すこと。カーボンニュートラルとも呼ばれる。日本政府は、パリ協定が掲げた世界の平均気温上昇抑制と今世紀後半のGHG排出実質ゼロという目標を達成するため、2030年までにGHG排出を2013年度比で26%削減する目標を設定。2020年10月には、2050年のカーボンニュートラルを目指すことを当時の菅義偉首相が宣言した。2021年4月の米国主催気候サミット(オンライン開催)においては、2030年までにGHG排出を2013年度比で46%削減する目標を表明した。住友建機は、建設機械が排出するガスをクリーンにすることで、CO2ゼロ実現に向けて取り組みを進めている。経済性、低燃費をキーワードに環境に優しい建設機械を製造し、省エネルギーセンター(ECCJ)の省エネ大賞を受賞する成果を上げている。
 新しい働き方
働き方改革が叫ばれて久しい。ICT活用によって労働生産性を高めつつ、多様な人材がそれぞれのニーズに合った働き方を可能とする仕組みの整備は、各企業で重要性を一段と増している。また、こと日本においては少子高齢化が深刻化しており、今後の生産年齢人口の減少を見据えて人材を確保するためにも柔軟な働き方の実現が必須だ。それに加えて昨今は、新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワークが浸透・定着し、従来と異なるニューノーマルの新しい働き方として注目されるようになった。住友建機では、新しい働き方への取り組みとして、建設現場における作業者の安全・安心確保、労働災害撲滅に注力している。建設機械と人間が協働する中で、事故を減らすための最新の仕組みとして、接触のリスクがある作業現場で自動的に機械を停止させる「衝突軽減システム」を導入した。

住友建機は、油圧ショベル、道路機械などの建設機械の製造から販売までを事業の柱とし、最新鋭の建設機械を日本だけでなく世界各国に供給している。これらの建設機械は時代とともに変遷し、住友建機が提供する価値にも変化が生じている。社会課題の解決に向けた取り組みとしては、建設機械が排出するCO2を減らす「脱炭素」に関する取り組みと、建設現場で作業する人間にとって安全・安心な建設機械を提供する「新しい働き方」への取り組みの2つがある。

住友建機が、世界中に製品を供給することは、裏を返せば世界中でCO2を排出していることになる。以前であれば、公害規制よりもパワーが必要とされたが、時代の変化とともにディーゼルエンジン搭載の建設機械も規制をクリアしながら環境負荷を低減してきた。さらにカーボンニュートラル実現に向けて、住友建機ではエンジンに加えてモーターを組み合わせたハイブリッド型の油圧ショベルをいち早く開発し、製品使用時のCO2削減に貢献している。こうした取り組みは、2007年度に省エネルギーセンターの省エネ大賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている。

もう1つの社会課題解決への取り組みが、建設現場における作業者の安全・安心を確保することだ。機械と人間が協働する現場では、事故や災害などが発生していて、その数は年々減少しているとはいえゼロには至っていない。こうした労働災害リスクを極限まで減らすために長年取り組んでいるのが、「FVM(フィールドビューモニター)」の機能の開発であり、その機能は継続的に進化している。

油圧ショベルには、運転室が車体の左側についている。このため、操作時に右側や後方が死角になりやすい。そこで、3つのカメラを搭載して車体の後方周囲270度をぐるりと俯瞰して映像で確認できる機能を開発した。これが2011年に提供を開始した初代のFVMである。同年、オプションで油圧ショベルへの搭載を開始し、2012年には国内向け油圧ショベルに標準装備として取り付けることで安全性を高めた。

初代のFVMは、死角になりやすい後方周囲270度に対して、近傍だけでなく遠方まで映し出すことができ、オペレーターが周囲の状況を的確に把握することができた。この機能はやがて業界のデファクトスタンダードへつながっていった。一方で、オペレーターは常に周囲の状況を確認する必要があるので、モニターを常に見ているわけではない。そこで、2017年には、油圧ショベルの周辺にいる人を検知するとモニター上に表示が出るのと同時に、アラーム音で危険を知らせるお知らせ機能付き周囲監視装置「FVM2」を開発し、提供を始めた。これは機械学習による画像認識技術を用いたものだ。

FVM2の検知システムの概要
FVM2の検知システムの概要
車体の3か所に設置されたカメラが後方周囲270度を俯瞰で撮影。オペレーターから見えない場所にいる現場作業者を検知した場合は音で知らせる。

その後、自家用車でも衝突軽減システムが普及し、油圧ショベルなどの建設機械にも衝突軽減システムの装備が求められるようになった。住友建機では2020年に衝突軽減システムとお知らせ機能を搭載した「FVM2+」の提供を開始することになった。衝突軽減システムは、旋回・後進・走行中に、一定の範囲内で安全ベストを着た人を検知すると、機械が自動的に減速・停止する。

衝突低減システムの効果
衝突低減システムの効果
衝突低減システムによって、車体付近にいる安全ベストを着た人を検知すると、接近距離によって、減速・停止する。接触事故防止に役立つ。

建設現場や土木現場で使われる建設機械だけに、利用される環境は総じて厳しい。現場には作業者や機材、土の山などが多くあり、さらに砂埃や雨など様々な環境下で、より正確に人間を識別することが求められる。そこで3DセンサーのLiDAR(Light Detection And Ranging、光による検知と測距)センサーを採用した。レーザー光の反射を使って三次元測距ができ、FVM2+では現場作業者が着用する安全ベストからの反射を検知することで「人間だけに反応する」ことに成功した。

同時に、オペレーターの体に負担をかけないために、衝突軽減システムでは停止の衝撃を和らげるように減速してから停止するようにチューニングをしている。衝突の危険を防ぎながら、オペレーターにも負担をかけない減速の調整には、現場でのヒアリングなどを通じた知見を生かした。さらに、衝突軽減システムの稼働をリアルタイムで把握するシステムも開発し、管理者がヒヤリハットマップを作るなどすることで、データを利用した労働災害リスクの低下にもつなげている。

衝突軽減システムによる安全レポート画面
衝突軽減システムによる安全レポート画面
衝突軽減システムの稼働履歴をリアルタイムで把握でき、蓄積されたデータを現場での接触や危険リスク対策に活用することもできるようになった。

2022年11月には、衝突軽減システム搭載のFVM2+は、NETIS(新技術情報提供システム)に登録され、ユーザーがFVM2+搭載の建設機械を採用すると、公共事業などの入札で加点の対象となり、その安全・安心への貢献は広く認められるようになった。初代のFVMから住友建機がこだわり抜く安全・安心な現場を支える建設機械の開発と提供は、さらに高度な安全性に結びつくように継続されていく。

  • FVM2とFVM2+は日本国内モデルにのみ装備できます。
  • 記事中の画像は開発中のもので、実際の画面とは異なる場合があります。
住友建機株式会社
https://www.sumitomokenki.co.jp/
住友建機は、世界最高水準の開発力と製造技術を持つ住友グループの建設機械メーカーです。代表的な機種である油圧ショベルでは生産累計31万台を誇り、住友の油圧ショベルは全世界で活躍しています。最近では油圧ショベルベースの金属スクラップ仕様機、解体仕様機、林業仕様機などの品揃えを強化しています。さらに道路を舗装するアスファルトフィニッシャでは、国内トップのシェアを誇ります。
主要生産品目
油圧ショベル(6トン~80トン)、 マテリアルハンドリング機、
道路機械(アスファルトフィニッシャ)

各社が取り組む社会課題

脱炭素 パネルイメージ

脱炭素

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介します。

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サプライチェーン

サプライチェーンのグローバル化や複雑化に伴い、企業にはサプライチェーン上で発生する課題への適切な対応が求められています。

新しい働き方 パネルイメージ

新しい働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が従来型の働き方を見直したことで、働き方改革が加速しています。

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健康

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって従業員の健康への配慮はよりいっそう重要なテーマとなっています。

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気候変動

地球温暖化の進行はビジネス上の深刻なリスクを引き起こす可能性があります。そのため、企業には中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められています。

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モビリティの電動化

環境負荷軽減への対応や社会的ニーズの高まりとともに、モビリティの原動力がガソリンから電気へと置き換わりつつあります。

コミュニティ パネルイメージ

コミュニティ

人と人のつながりであるコミュニティを再生・再構築することで社会課題解決に向き合う動きが活発になっています。

貧困 パネルイメージ

貧困

子どもの貧困問題への対応が喫緊の課題になるなど、現代の日本においても貧困は深刻な社会課題の一つとなっています。

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次世代の育成

日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっています。

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先端医療

近年における医療の飛躍的な進歩には、大学等の研究機関はもとより、企業による最先端技術への取り組みが大きく寄与しています。

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地産地消

再生可能エネルギーを生かし、地産地消を通じて脱炭素に貢献しながら産業振興も目指す取り組みが各地でスタートしています。

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食品ロス

世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンが毎年廃棄されているとされ、食品ロスの解決は一刻を争う課題になっています。

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地球環境との共生

人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべきさまざまな課題について、各社の取り組みを紹介します。

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強靭性・回復力

自然災害だけでなく、さまざまなハザードがあり、その姿は時代とともに変化し、激甚化もしています。それに負けない強靭性や回復力を持つしなやかさが求められています。

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地方創生

地域の資源を生かして産業を強化することで、地方の人口減少を克服し、持続的な社会を創生する取り組みを紹介します。

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