住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
化学の力を生かし、パートナーとの協働でカーボンニュートラル社会の実現に貢献する
吸水性樹脂、電子材料、環境・エネルギー分野や生活・医薬関連製品を主力事業とする住友精化は「化学の分野で世界に通じる独創的な技術を開発し、特色のある質の高い製品を国内外に供給することにより、社会の発展に貢献」することを企業理念に置く。
パーパス(存在意義)を「私たちは、住友精化のケミストリーで、地球と人々の暮らしが直面する課題を解決していきます」というステートメントで表し、従業員が気持ちを一つにして困難な課題に挑戦する風土を醸成していく決意を表明している。
「住友精化のケミストリー」とは、「優位性・独自性を持つコア技術(重合制御、精密合成、乳化分散、ガス精製・分離・調合、架橋制御、微量分析、微粒子化)」に加え、「様々なものを融合させて新しいものを生み出すこと」「人と人とが一緒に取り組むことで新しいものが生まれるという比喩的な意味」を表している。
2025年度が最終年度になる中期経営計画では、柱の一つとして「サステナビリティへの取り組み深化」を掲げた。事業活動を通じた地球環境の保全や社会的課題の解決への貢献に継続的に取り組み、事業の持続可能性の向上を目指すサステナビリティ経営を推進する。
住友精化の主力商品である吸水性樹脂「アクアキープ」は自重の数百倍の水を吸収・保持する機能を有する。用途に合わせて吸水性能を自在にコントロールできる特長を生かして、紙おむつやペットシートなどの日用品、電力・通信ケーブルの止水剤といった工業用製品などに使用されている。
一方で住友精化の製品は、大半が石油由来の原料を使用し、製造プロセスにおいて多量のCO2を排出するという課題もある。住友精化では気候変動問題に対応するため「国内で排出する温室効果ガス(GHG)を2030年までに2013年比46%以上削減」と「2050年カーボンニュートラルの実現」という目標を設定した。カーボンニュートラルへの対応は、(1)自社からのGHG排出量の削減、(2)低GHG製品や、環境貢献製品の提供、(3)炭素循環社会実現への貢献、という3つの方針に基づいて推進する。
自社からのGHG排出量は、製造工程のエネルギー消費(スコープ1、2)を低減することで削減する。製造プロセスを見直し、省エネ機器導入や再生可能エネルギーへの転換を進めて工場からのGHGの直接排出および間接排出の削減に努めている。
さらには、自社の事業活動に関係するサプライチェーン(スコープ3)からのGHG排出量の算定を進めている。吸水性樹脂が製品ライフサイクルを通じて排出するGHGは、原料調達(カテゴリー1:購入製品・サービス)が大半を占める。吸水性樹脂を使った紙おむつなどを使用後に回収して再利用すれば原料とGHG削減にもつながるため、紙おむつメーカーなどと連携した使用済み製品の回収や、吸水性樹脂のリサイクル技術開発などにも取り組んでいく。
炭素循環社会の実現に向けて、GHG回収・活用・固定化する技術革新にも取り組んでいる。住友精化では様々なガスの吸着特性の差を利用し、必要なガスを分離精製するPSA(圧力変動吸着:Pressure Swing Adsorption)法によるガス分離技術の開発ならびに事業展開を進めてきた。
CO2に関しても鉄鋼メーカーと共にPSA技術を活用し、高濃度CO2の回収実績を重ねており、これをボイラーなどの燃焼排ガスに含まれる低濃度CO2の分離回収技術へ深化させて、自社工場での実証を進めていく。様々な産業分野でCO2回収の需要は多く、社会実装を実現することで環境・エネルギー分野で貢献していく。
2024年に設立80周年を迎える住友精化は肥料の製造・販売を祖業に、その後も技術基盤を生かして化学分野で研究開発を進めてきた。時代の要請に合わせて事業分野は変わってきたが、変わらないのは化学の力で成長してきたことだ。「住友精化のケミストリー」を通じて、社会の喫緊の課題であるカーボンニュートラル実現に貢献していく。