住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~
ワイヤーハーネスの製造を「地産地消」に
製造の自動化がもたらすビジネスと社会課題解決の両立
住友電装は、自動車用・機器用のワイヤーハーネスをコアとして電子部品や電線などの製造・販売を行っている。ワイヤーハーネスとは、機器の中で電力・通信・情報を伝送する複数の電線を束ねた集合部品のことだ。自動車用のワイヤーハーネスは、自動車内の電力供給や情報通信に欠かせない製品として需要が高まっている中で、住友電装は世界30以上の国と地域で事業を展開しており、世界でもトップシェアを誇っている。
ワイヤーハーネスは自動車の中を張り巡らされ、人間で例えると血管や神経のような役割を果たしており、電力や情報信号を伝達する。数百を超える電線と、コネクタや制御ユニットであるECUなどを適切に配置しながら、それぞれの車種の形状に合わせた図面に従って組み立てていく。
ワイヤーハーネスの製造は、その複雑な作業故に自動化が難しいとされており、現在も世界の各拠点で、多くの人員を雇用して製造を行っている。コスト競争力の観点から、例えば北米向けのワイヤーハーネスはASEAN各国の工場で製造される等、製造拠点からの長距離輸送はやむを得ず、それに伴うCO2排出という問題を避けて通ることはできなかった。そのような中で、昨今の世界的な半導体不足や、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、「労働集約型」というビジネスモデルが通用しなくなったため、住友電装は、この難局を突破するための一つの施策として、「地産地消」の体制構築をめざしている。
「地産地消」実現のために、住友電装は、これまで不可能とされていた製造工程の自動化に向けた取り組みを開始している。例えば自動化による工数削減が実現しやすい「セット工法」の実用化や、分割ハーネスの導入である。
ワイヤーハーネスの製造工程は従来の人手に頼る工法でも、全工程の約15%は自動化が進んでいるが、切圧線が自動でセットされる「セット工法」の実用化により、リードタイムの大幅な短縮につなげることができた。さらに4、5個のモジュールに小型化したハーネス(分割ハーネス)を自動で組み立てる仕組み(e-STEALTH W/H®)を掛け合わせることで、ハーネスのカタチを変え少ない品番で多品種対応をめざすと同時に、自動化率もモデルラインでは約50%まで高められる。自動化率を高めることで、製造コストが高い地域でのワイヤーハーネス製造も容易となり、地産地消の推進、輸送時のCO2排出量の削減にもつなげられる。
このほか住友電装では、従来品に比べて車両トータルで約12%の軽量化を実現したアルミワイヤーハーネスも開発した。全世界でトップシェアのワイヤーハーネスが軽量化を実現できれば、自動車走行時のCO2排出量削減に大きな効果が期待できる。
社会課題解決とビジネス成長はトレードオフになることが少なくないが、住友電装では社会課題の解決とビジネス成長を、同時に実現できるように模索していく。