地球規模での気候変動を緩和する対策として、最も有効と考えられているのが各種温室効果ガスの排出削減だ。特に二酸化炭素(CO2)に関しては、削減から回収・資源化まで幅広い分野で対策が講じられてきた。
そうした中、高い有効性と持続可能性で注目を集めているのがバイオマス発電である。バイオマス発電とは、生ごみや間伐材など生物由来の有機物資源(biomass)を燃料に使う発電方法で、燃焼の際には当然ながらCO2が排出されるが、原料となる有機物が成長過程でCO2を吸収しているために総量としては相殺される点(カーボンニュートラル)や、風力や太陽光発電のように気象条件に左右されることがない点などが評価され、日本でも導入する企業が増えている。住友大阪セメントは2004年から同業他社に先駆けてこれに取り組んできた。
同社におけるバイオマス発電の特徴は、各工場の立地や地域性を考慮した上で、それぞれに最も適した発電方式を導入している点にある。
例えば、高知工場にある2基の発電施設のボイラーは流動床ボイラーを採用している。流動床ボイラーは多種多様な燃料に対応可能であり、高知工場では建築廃材と間伐材の両方を使用している。高知県は森林面積割合が全国1位の約84%であり、高知工場は地元の林業事業体と連携することで安定的にバイオマス燃料の供給を受けることができる体制を整えてきた。四国地方の間伐材は長らく製紙原料として使われてきたが、2000年ごろから全国的に紙の生産量が減少し続けているため、需要が低下している現実があった。その余剰分をバイオマス燃料にすることで、森林資源の有効活用と林業の持続に貢献しているのだ。
また、兵庫県にある赤穂工場の発電施設では、微粉炭だきボイラーを使用しているため、バイオマス比率は2%にとどまっている。しかし、その4分の3程度を下水道の汚泥を原料とする固形燃料を使用している点に大きな特徴がある。この燃料は大阪市が進めている平野下水処理場汚泥固形燃料化事業で生産された炭化燃料化物などである。現在、下水汚泥はカーボンニュートラルなバイオマス資源として注目を集めており、新規開発された燃料を安定的に利用するのもSDGsの理念に沿った施策の一つといえるだろう。
そして、栃木工場の特徴は、バイオマス比率が93%という高比率で稼働している点にある。バイオマス発電を導入した2009年には65~70%だったものを、施設や運用面の改善を進めることで同社随一のバイオマス比率の実現に成功した。また、同社が住友林業などと共同で設立した八戸バイオマス発電株式会社の発電施設は売電専門の発電施設で、主に間伐材を材料としている。現状、一部を輸入材(PKS)に頼っているが、今後は国内材100%にする方向で検討中だ。
現在、国全体でCO2削減の施策が検討されている中、一事業者としてどのように貢献していけるのか――。今後も研究を重ね、世界的な動向を注視しながら同社独自のSDGs事業として継続していく考えだ。