テーマ3
SDGsと住友「まちづくり」

 ワンポイント解説
国連の推計によると、世界の総人口のうち都市に住む人口の比率は現在、既に約半数に達していて、2050年には約7割に達します。都市人口の増加は、地球温暖化やそれに伴う海面の上昇や環境汚染、災害被害の拡大、交通の混乱などのリスクを引き起こします。一方で日本の総人口は国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、2010年は1億2806万人だったのが、2100年には6485万人まで急激に減少し、地方の衰退や社会保障などの持続が困難になることが危惧されます。世界と日本の人口の今後の変化が深刻な社会課題を生むことは間違いなく、その解決のためにSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」への取り組み、日本においては安全安心なまちづくりや、地域産業支援、街の活力再生などによる地方創生の取り組みがとりわけ重要であることは言うまでもありません。
このような状況の中、住友重機械エンバイロメントが地元の企業や自治体と連携し地域の産業が抱える社会課題を解決した事例や、災害リスクを意識する企業のニーズに応えるため、住友倉庫が災害時にも文書資産を安全に保管するサービスを提供している事例、ドライブレコーダーを活用し交通事故の削減につながる新タイプの保険を開発した三井住友海上火災保険が、さらにドライブレコーダーを活用した高齢者向けの安全プログラムを地方自治体に提供する事例、 住友不動産が災害対策などの課題を持つ地域を再開発事業により防災性が高く持続的な活動を可能とする街へ再生している事例など、安全安心かつ地域の活力を向上させるまちづくりを多角的に推進し、地方創生につながる積極的な取り組みに注目が集まります。

日経BPコンサルティング
SDGsデザインセンター長
古塚 浩一

住友重機械エンバイロメント

独自の排水処理技術と町ぐるみの協力で、環境負荷の低減と地域産業の負担軽減に貢献

和歌山県西牟婁郡上富田町に新設された梅調味液バイオガス発電所。

和歌山県南部に位置するみなべ・田辺地域では、江戸時代から400年以上にわたり高品質な梅を生産してきた。2015年12月には、「みなべ・田辺の梅システム」が次世代に受け継がれるべき重要な伝統産業、文化として世界農業遺産に認定されている。

梅干しの加工工程で発生する梅調味廃液は、BOD(生物化学的酸素要求量)が10万mg/lを超える非常に高濃度な廃液で、一般的な好気性の排水処理設備では処理が難しい。廃液の処理には産廃業者を利用する必要があるが、コストが高く地域の梅干し加工業者にとって大きな負担となっていた。

住友重機械工業の子会社で、上下水事業や工場排水処理事業を手掛ける住友重機械エンバイロメントは、業界最大手の梅干し加工会社である中田食品を事業主体として「梅調味液バイオガス発電所」を建設した。スキームの構築は地元の産業廃棄物運搬業者である宮惣ケミカルと共同で行い、同社が中田食品の梅調味液に加え、他の梅干し加工業者からの調味液収集と運搬、設備の運営管理を担当。住友重機械エンバイロメントが長年培ってきた水処理技術を生かし、設備の設計、施工を行った。

本設備では、従来、大半が廃棄されていた梅調味液を中和・濃度調整後、嫌気性排水処理を行い、その過程で発生するバイオガスを利用して発電を行うことでエネルギーを創出。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を利用して売電することでプラント建設コストの回収を行う計画となっている。

梅調味液は糖分濃度が高く、嫌気性処理には不向きとされていたが、住友重機械エンバイロメントの独自技術でこの問題を解決し設備化。一般的な好気性排水処理に比べ、動力の削減、余剰汚泥発生がないことから、処理コストを大幅に削減することが可能となった。プラント建設計画に際しては地元の上富田町も建設用地や処理に必要な井戸水の提供で協力するなど、まさに地域ぐるみのプロジェクトとなった。こうして環境への負荷を低減しながら効率的な梅調味廃液の処理を行い、地域産業の負担軽減を実現する梅調味液バイオガス発電所が完成した。

梅調味廃液処理のフロー

プラントは2019年4月に稼働を開始。まずは県全体で年間に出る梅調味廃液約6万トンのうち8000トンの処理を計画している。今後も住友重機械エンバイロメントは同様の問題を抱える地域行政や業界に対して情報を発信し、持続的なまちづくりに貢献していく考えだ。

  • BOD(生物化学的酸素要求量)とは、河川の汚濁度合いを表す指標。河川の環境基準はBOD1~10mg/l程度とされる
  • BOD(生物化学的酸素要求量)とは、河川の汚濁度合いを表す指標。河川の環境基準はBOD1~10mg/l程度とされる

住友倉庫

災害に強い倉庫で、文書保管の災害リスクを低減する

地震だけでなく台風による災害も頻発している昨今、企業では災害リスクに対する意識が高まり、BCP(事業継続計画)が必須のテーマとなっている。災害時は人的被害や建物・設備の損壊等のリスクはもちろんのこと、顧客情報や事業活動における様々なデータを記録した文書資産の安全も脅かされる。企業で扱う文書はデジタル化が進んできたものの、紙であることを求められる文書は依然残り、紙の資産として保管しなければならないケースも当然ある。こうした文書を安全に保管するサービスを提供しているのが、住友倉庫だ。

経理関係文書、技術・研究開発資料、各種帳票等の重要書類やカルテ、フィルム、磁気テープなど、企業にとっての情報資産である文書(書類等)を、セキュリティを高めた倉庫で保管する。住友倉庫ではアーカイブズ倉庫におけるセキュリティ対策として、施設内にICカード式および生体認証機能付き電気錠、監視カメラ、エレベーター制御等のセキュリティ設備を導入するとともに、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格ISO27001認証を取得し、安心して預けられる体制を整えている。
防災機能を高める設備の1つとして、羽生アーカイブズ第2センターには窒素ガス消火システムが備わっている。

同社が文書保管サービスを開始したのは1980年代と古い。阪神・淡路大震災の翌年(1996年)には、業界初となる免震構造を採用した倉庫が東京都内で営業を開始した。その2年後(1998年)には埼玉県羽生市に「羽生アーカイブズ第1センター」を開設。さらに東日本大震災を経験した直後の2012年には、免震構造や非常用自家発電設備に加え、窒素ガス消火システムなどを導入し、文書保管の安全・安心をより高いレベルで実現する「羽生アーカイブズ第2センター」を開設した。これらの倉庫では紙の文書だけでなく、磁気テープなどの記録メディアも長期保存に適した温湿度環境で保管できる。

ターゲットは言うまでもなく首都圏およびその近郊に本拠を置く企業だ。都心では、オフィス賃料や設備費用、人件費などで高いコストがかかるため、文書保管に割くスペースの確保に悩んでいる企業は多い。加えて、首都直下地震など巨大地震が発生した際には東京では大混乱が予想され、津波や火災の心配があるほか、台風による高潮の被害も考えると、都心の自社オフィス等で文書を保管すること自体に多くの企業が不安を持つ。その点、東京から北に約60km離れた羽生であれば都心との同時被災を避けられる上、津波や高潮の心配もなく、顧客企業は安心感を得られる。書類のピックアップが必要になった場合も、同社による集配サービスや文書電子化サービスを利用すれば、閲覧も容易となる。

災害に際して企業活動を支えるこのサービスは、まさに強靭なまちづくり、ひいては国づくりに貢献するものといえる。同社は蓄積したノウハウを生かし、現在、羽生アーカイブズ第2センター第三期倉庫のほか、愛知県犬山市において名古屋・中京地区の企業を対象とする新たな文書保管倉庫を建設中である。羽生は2020年9月に、犬山は2020年4月に営業開始を予定している。中京エリアにおいても羽生と同じく防災機能の高い新倉庫を開設することで、災害リスクを意識する企業のニーズに応えられると同社は考えている。

愛知県犬山市に建設中の新倉庫(完成予想図・)。名古屋市中心部からは20km圏内にある()。この新倉庫では、羽生アーカイブズ第2センターと同様の防災機能とセキュリティ設備を採用している。
羽生アーカイブズ第2センター倉庫床下にある免震ピット(左)。柱の下に設置された免震装置が建物を支えると同時に、地震の際には水平方向に変形することにより、地震の揺れを軽減し、建物内で保管している大切な文書を守る(右)。犬山新倉庫にも同じものが採用されている。

三井住友海上火災保険

専用ドライブレコーダーを利用した新タイプの自動車保険で、交通事故のない安心・安全なまちづくりを目指す

交通事故の低減は、安心・安全なまちづくりという視点においても重要なテーマとなる。近年あおり運転が注目されたことをきっかけにドライブレコーダー(以下、ドラレコ)が普及し、自動車走行中の様々なデータが記録されるようになった。このドラレコを道路交通における安心・安全の実現に役立てられると考え、本業に結びつけた商品を開発したのが、三井住友海上火災保険だ。長年研究を続けるテレマティクス※1技術を活用した保険商品「見守るクルマの保険(ドラレコ型)」を、2019年1月からあいおいニッセイ同和損害保険と共同で発売している。

この保険商品は通信機能を持つ専用ドラレコを利用する。最大の特徴は、事故等で一定以上の大きな衝撃※2を検知した場合、自動的に専用デスクへ通知し、オペレータが専用ドラレコを通じてドライバーに初期対応をアドバイスする「事故緊急自動通報サービス」だ。事故を起こすとドライバーは動転するものだが、事故の直後にオペレータとコミュニケーションをとることで、ドライバーに一層の安心を提供することができる。

「見守るクルマの保険(ドラレコ型)」は、オリジナルの専用ドライブレコーダーを利用したサービスだ。

これまで、形のない商品を提供してきた保険会社にとっては、専用ドラレコという“モノ”を提供する点が新しい挑戦だったという。保険会社が提供する専用ドラレコにはどのような機能が求められるか論議を重ね、消費者アンケートの実施や社内でのトライアル等、幅広くヒアリングを実施。その結果、最も注力したのが画質だ。画質が低いために事故相手のナンバープレートが見えなかったという過去の事例を参考に、録画機能の高画質化を追求した。加えて、運転中に「前方衝突」「車線逸脱」「高速道路の逆走注意」といった多彩なアラートを発するなど、ドライバーの安全運転をサポートして事故を未然に防ぐ「予防対策」にも力を入れている。専用ドラレコを利用する自動車保険は他社にもあるが、差別化のポイントがこの高画質と豊富なアラート機能だ。

事故等で一定以上の衝撃※2を検知した際は、専用ドライブレコーダーが自動で専用サポートデスクに衝撃検知時の情報を通知する他、記録された事故の映像も自動で送信する。

「見守るクルマの保険(ドラレコ型)」は大きな反響を呼び、発売から12カ月目で契約13万件を突破、現在も月1万件前後の申し込みがある。あおり運転対策として専用リアカメラも開発し、ニーズのあるドライバーに紹介できる体制を構築している。

2019年10月、三井住友海上火災保険は高齢者ドライバー事故ゼロ実現に向け、福井県鯖江市とこの専用ドラレコを活用した安全運転プログラム提供などで合意した。こうした活動によって事故のない快適なまちづくりを推進し、最終的に保険の重要性周知につなげるというビジネスモデルの下、同社は取り組みを続けていく。

  • テレマティクスとは、自動車などの移動体に搭載する通信システムを利用して様々な情報やサービスを提供する仕組みのこと
  • 一定以上の衝撃とは、一般的に走行が困難となる程度(時速30km以上で壁と衝突した場合等)の衝撃を想定している
  • テレマティクスとは、自動車などの移動体に搭載する通信システムを利用して様々な情報やサービスを提供する仕組みのこと
  • 一定以上の衝撃とは、一般的に走行が困難となる程度(時速30km以上で壁と衝突した場合等)の衝撃を想定している

住友不動産

再開発を通じ、災害に強く地域に活力を生む街づくりを推進

右:「後楽二丁目東地区」(東京都文京区)の再開発事業によって完成した「住友不動産飯田橋ファーストビル」。左上:再開発前の同エリア(赤枠内が再開発対象地区)左下:再開発前の西地区内から「住友不動産飯田橋ファーストビル」を望む。当時は狭隘な道路が入り組み、木造住宅が密集していた。

都心においては、低・未利用地であったり、四方を狭隘な道路に囲われた災害リスクが高い住宅密集地であったり、人の往来が少なく地域活力が乏しいといった、個人、自治会だけでは解決できない悩みを抱えながら住民が暮らしている地域も少なくない。住友不動産は、こうした課題を抱えた地域において都市の機能を高める街づくりを担う総合デベロッパーとして、細分化された権利関係の土地を取りまとめ、地域の課題を解決する再開発事業に昭和50年頃より積極的に取り組んできた。

再開発事業を手掛けるにあたり住友不動産が大切にしているのが、街は地域の人々と共に創り上げていくものという考え方だ。同社は各地権者と丁寧に話し合うことで人々の暮らしや地域の課題と向き合い、一つひとつ合意形成を図った上で、事業者としての収益性も考えながら地域住民が望む街づくりを進めている。

この合意形成は、様々な関係者の利害が絡むため、最も時間を要する困難な作業だ。まずは地権者による話し合いからスタートし、再開発への理解を醸成した上で、街のあるべき姿を計画として取りまとめ、実現に向け事業を進めていく。同社が目指すのは、地域の課題改善策を共に考え、住民が安全・安心な暮らしを送れるとともに、外からも多くの人々が訪れ、活力にあふれた持続的な活動を可能とする街への再生である。

同社の取り組み実績により、都心の街づくりが推進された再開発地域の一つが、JR飯田橋駅至近の立地である、東京都文京区「後楽二丁目東地区」と「後楽二丁目西地区」だ。このエリアはかつて各戸の間に狭い道路が入り組み、火災時の延焼リスクが高かったほか、川の氾濫による冠水など水害の不安も抱えていた。同社はまず東地区で法定再開発を提案。1987年に地権者と最初の勉強会を始め、プランを提示して意見を聞き、課題解決などの意向を反映してプランを練り直していった。当初は反対する地権者もいたものの、最終的には全員の同意を得て、2000年にオフィス、住宅、商業の複合開発「住友不動産飯田橋ファーストビル」が完成。災害リスクの高かった低層木造住宅の密集地区が、上層階と下層階の間に免震装置を設置した日本初の中間免震構造ビルへ生まれ変わった。地域に暮らしていた人々の住宅は上層階に設けられ、事業を営んでいた住民は下層階に事務所や店舗を開いてかつての生活を取り戻した。

「後楽二丁目西地区」の再開発によって2010年に誕生した「住友不動産飯田橋ファーストタワー」。左手前は先行して完成した「住友不動産飯田橋ファーストビル」。

西地区でも、隣接する東地区の様変わりした姿を目の当たりにして街の再生機運が高まり、再開発が進んだ。連続した地域の再開発を通じて、両エリアは災害リスクが低く安全で住みよい環境となっただけでなく、都心部の恵まれた立地を活かし、新たな居住者・就労者も集まって、昼夜とも賑わいのある魅力的な街として再生された。なお、同社は再開発事業の完成後も地域の防災訓練を居住者や就労者などと一体になって行うなど、コミュニティの維持向上や地域活力の創出にも注力し、持続的な街づくりの一翼を担っている。

住友不動産が推進してきた法定再開発事業は、既存の大きなビルとビルを合わせて建て直す開発事業とは異なり、災害に弱い街から強い街へ再生し、高度利用を図り、新たな生活者も呼び込んで都市としての持続的な発展を促すものだ。同様に災害に対する課題を持つ地域はまだ都心に多く残っており、今後も同社は持続的なまちづくりを続けていく。

  • 低・未利用地とは、適正な利用が図られるべき土地であるにもかかわらず、長期間にわたり利用されていない「未利用地」と、周辺地域の利用状況に比べて利用の程度(利用頻度、整備水準、管理状況など)が低い「低利用地」の総称(国土交通省ホームページより)
  • 低・未利用地とは、適正な利用が図られるべき土地であるにもかかわらず、長期間にわたり利用されていない「未利用地」と、周辺地域の利用状況に比べて利用の程度(利用頻度、整備水準、管理状況など)が低い「低利用地」の総称(国土交通省ホームページより)

三井住友建設

プレキャストコンクリート工法で、強靭なインフラづくりに貢献

プレキャストコンクリート工法を採用し、2017年に竣工したベトナムのディンブー・カットハイ橋(ラックフェン港連絡路)。空港と都市をつなぐ経済価値の高い海上橋であり、現場でのコンクリート打設に比べて半分以下の工期を実現した。

1980年代のアメリカでは、老朽化した道路や橋梁などのインフラが経済や人々の暮らしに深刻な影響を与えた。「荒廃するアメリカ」として当時のベストセラーにもなったインフラの老朽化問題が、高度経済成長期から半世紀を過ぎた日本でも現実味を帯びてきており、持続可能なまちづくりは喫緊の課題となっている。

そうした中、三井住友建設が注力しているのが、プレキャストコンクリート工法というコンクリートの部材を工場で作り、建設現場で組み立てる工法だ。現場でコンクリートを打設する工法に比べて、品質の安定、工程の省人化、工期短縮、建設現場での省エネや近隣への粉塵、騒音の抑止など様々なメリットを持つ工法だ。

同社がプレキャスト工法を本格化させたきっかけは、90年代前半にコンクリートの製造技術の進歩により従来は難しいとされてきた60m以上の高層建築に対応できる高強度のコンクリートが造れるようになったことだ。特に超高層マンションなどの居住性が求められるビルでは、鉄骨造(S造)に比べて揺れが少なく、耐火性の面などでも優れている鉄筋コンクリート造(RC造)が適しており、コンクリートの強度向上はプレキャスト化を進める大きな追い風となった。また、バブル経済の崩壊以降に現場でコンクリートを打つ職人の数が減少したことも重なり、品質を維持し省人化を実現するプレキャスト工法が求められた。

今、同社が得意とするのは、スクライム工法という構造体となる柱や梁の接合部をプレキャスト化する技術である。風雨を遮るだけの壁面パーツに比べ、構造体となる柱や梁には重量や意匠の設計も必要になる。また、柱と梁の接合時、複雑な箇所では20本の40mm径鉄筋をズレのないように絡み合わせなければならず、設計から施工まで高度な技術を要するのがスクライム工法の特徴。この工法を可能にしているのが、自社でプレキャスト工場を持っていること。設計から施工まで一気通貫でできることでノウハウの蓄積が可能になり、複雑なオーダーにも応えることができるのだ。

アラミドFRPロッドとは、アラミド繊維「テクノーラ®」を強化剤とするFRP製棒状材。髪よりも細い繊維の束だが、鉄筋の6倍の強度を持つ。

さらに橋梁建設の分野では、新素材を使った新しいプレキャスト工法をNEXCO西日本との10年越しの共同研究で開発した。鉄筋の代わりにアラミドFRPという非鉄製材をコンクリート中に採用することで、凍結防止剤や飛来塩分によるコンクリートの劣化を防げるという。少子高齢化が進み、職人だけでなく技術者の数も減っていく中で、「いかに次の世代の負担を軽くするか」という視点から開発された技術で、アラミドFRPを採用した超高耐久橋梁の建設が徳島道で進められている。完成すれば、メンテナンス不要のインフラということで、世界に強力なインパクトを与える技術になるといわれている。

今後同社では、IoTを使い設計~製造~流通~施工までのプレキャスト部材を一元管理する次世代プレキャスト生産管理システム「PATRAC」の開発を進め、生産性の向上に努めていくという。また、5.4kmの長さを誇るベトナムのディンブー・カットハイ橋(ラックフェン港連絡路)やマレーシアの石油精製プラントの建設工事で培った実績を基に、東南アジアや日本と同じ地震国をターゲットにプレキャスト工法の普及と強靭なインフラづくりに貢献していく構えだ。

スクライム工法で建設された52階の超高層マンション。建設に当たっては17種の特許技術が駆使され、耐震性と居住性を最大限に高めた建築物となっている。
スクライム工法を採用しているマレーシアのプラント工場の建設現場の様子。フルプレキャスト工法が採用されたことで、約3倍の施工生産性と労務費の削減を達成した。

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