穏やかな暮らしを一瞬にして奪う自動車事故。その原因として、居眠り運転のほか、体調不良・急病・過労など運転者の健康状態に関連するものの割合が増えて久しい。住友理工では、自社開発の柔軟かつ電気を通すゴム材料をセンサーに活用し、運転者の健康状態や居眠り把握に役立てられないかと着目。運転中の体の状況を検知する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」の開発を行っている。
DMSは、同社独自開発の「スマートラバー(SR)」を採用するセンサー内蔵のシートを運転席に敷くことで、座圧分布・変化、臀部の骨から伝わってくる振動を検知し、独自のアルゴリズムで心拍数・呼吸・重心移動を推定。その結果をクラウド上に転送し、注意喚起や覚醒などの各種サービスに活用する仕組みだ。電気を通す導電ゴム自体は以前から存在していたものの、一般的に硬く、伸長の動作で導電経路が破断してしまうものだった。そこで、同社は柔軟な導電素材を採用することで、繰り返しの圧縮・伸長に対しても導電経路が破断しないSRを開発。このSRを電極にしてセンサーに活用できることがわかり、自動車の安全運転実現に向けた用途開発に取り組んだ。身体状況の検知には通常、センサー機器を装着する必要があるが、運転者は装着状態が気になることも多い。その点、SRは柔軟という特性があるため、シートに敷いても違和感なく座ることができ、意識せずにデータを測れる利点がある。