こうした終活の質的な変化に対応して、人生100年応援部が中心となって提供しているサービスは、①資産管理対策商品、➁死後事務対策商品、③資産承継対策商品――の3分野がある。
そのうち、資産管理対策で代表的な商品が、「人生100年応援信託〈100年パスポート〉」(2019年6月提供開始)である。この商品は、元気なうちに一定額の資金を預けると同時に、本人の判断能力が低下した際の払い出し手続きの代理人として家族の誰かを指定しておくことで、将来の生活費支払いの安心や、詐欺の防止などの安全を提供する商品である。なお、何も準備しないまま認知症になって判断能力が低下すると、本人は預金の引き出しができなくなり、成年後見制度の利用が必要となるが、この場合、毎月少なくない費用が発生する。100年パスポートは、成年後見制度による本格的な対応を希望しない層に向けて、信託を用いた簡便な資産管理手段を提供している。
この商品を発展させ、資産運用をしながら将来の認知症に備えたい人向けに開発したのが、「人生100年応援信託〈100年パスポートプラス〉」(2021年10月提供開始)である。投資信託やファンドラップ(顧客の希望を聞いて立案したプランに基づいて投資一任契約を結ぶ運用手法)といった金融商品で運用することができる。
死後事務対策商品としては、「おひとりさま信託」を提供している。本商品は、身寄りのない「おひとりさま」や、将来配偶者に先立たれ「おひとりさま」になる可能性のある人、そして、身寄りはあるが迷惑を掛けたくない人のニーズに応えている。具体的には、遺体の引き取り、葬儀・埋葬、病院代の支払い、公的年金の届出事務などの事務手続き(死後事務)を代行する。家財などの遺品整理、スマホをはじめとしたデジタル機器のデータの消去などにも対応している。
さらに、資産承継対策商品としては、遺言について、遺言作成のコンサルティング、保管、相続発生後の遺言執行までをサービス対象とした「遺言信託」という商品を昭和の頃から提供しており、同社は様々な案件に対応できるノウハウを蓄積してきた。
遺言というと高齢者のイメージとなるが、同社では、住宅ローンを組む20~40歳代を中心とした若い層向けの自筆証書遺言お預かりサービス「ハウジングウィル」を無料で提供している。ウィルは英語で遺言(will)を意味する。住宅ローンを組んだ自宅(ハウジング)の相続に関する自筆証書遺言を三井住友信託銀行が預かり、万が一、ローン返済中に契約者が他界した場合、三井住友信託銀行が自筆証書遺言の「検認」(自筆証書遺言の偽造や変造を防ぐための手続き)を家庭裁判所に申し立て、自宅の円滑、簡便な相続手続きにつなげていく。
「ウェルビーイング(Well-being)」(個人が肉体的、精神的、社会的に満たされた状態)という用語が徐々に市民権を得てきたが、三井住友信託銀行では、「ファイナンシャル ウェルビーイング」(お金についての不安を取り除き、お金と健全に向き合えている状態)に注目している。
終活に対する想いや家族の形は人それぞれであり、ますます多様化しているが、同社は、各個人の想いにしっかり寄り添えるよう、資産管理・承継の分野で積極的な商品開発を行い、多様な選択肢を提供していくことを通じ、顧客の「ファイナンシャル ウェルビーイング」実現に貢献していくことを目指している。