住友と共創 ~ビジョンを描く~

SMBC日興証券

スタートアップを支援し社会課題解決に貢献

2023年12月18日、産直プラットフォーム「ポケットマルシェ」を運営する雨風太陽(本店岩手県花巻市、髙橋博之代表)が東証グロース市場に上場した。同社のルーツは2011年の東日本大震災をきっかけに2013年に発足したNPO(非営利団体)法人の東北開墾で、世界初の食べ物付き情報誌『東北食べる通信』を創刊したことにさかのぼる。

雨風太陽のビジネスモデル
雨風太陽のビジネスモデル(出典:雨風太陽)

震災当時、被災者の多くは農業・漁業などに従事する生産者で、生産体制も販路も断たれてしまっていた。そうした状況の中、地域復興のためには生産者と消費者を結ぶメディアが必要だと考えた代表の髙橋氏は、生産者を取材して消費者向けに発信する情報誌を創刊した。2014年には、一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を創設し、『東北食べる通信』のモデルを日本全国と台湾の50地域へ展開。2016年にはスマホアプリ「ポケットマルシェ」を開始した。髙橋氏は、「都市と地方をかきまぜる」をスローガンに掲げ、全国展開を加速させるため、冒頭に述べたように上場を果たしたのである。

実は、このIPO(新規株式公開)に際して主幹事として支援したのがSMBC日興証券だった。同社は、2023年4月の機構改革で、未上場企業向けのIB(投資銀行)業務全般を支援するために、従来の組織をプライベート・コーポレート・ファイナンス本部と改組。他の本部やグループ各社と連携して、特にスタートアップ企業に対する高度なソリューションを提供する組織として生まれ変わった。

雨風太陽の主幹事を決めるコンペでのプレゼンテーションでは、「社会課題を解決するためのIPO」であることを投資家に訴えて理解を得ることと、グループを挙げて支援することを強く訴えた。これが雨風太陽に高く評価されたという。

プライベート・コーポレート・ファイナンス本部のミッション
プライベート・コーポレート・ファイナンス本部のミッション(出典:SMBC日興証券)

IPO支援、VC連携支援、M&A支援を3本柱に世界に通用する企業を創出

この本部が提供するサービスの3本柱は、①IPO支援、➁VC(ベンチャーキャピタル)連携支援、③M&A(合併・買収)支援――である。同社は、業界初、世界初といった技術・サービスやビジネスモデルを持つスタートアップ企業に着目。IPOの際に有価証券の募集・売り出しを行う引受業務で中心的な役割を果たす証券会社である“IPOブックランナー”として関わることで、多くの企業のIPOを支援してきた。

IPOブックランナーとしての実績(引受金額)は、2020年から2023年まで4年連続で業界1位を記録している(SMBC日興証券調べ)。直近では、半導体製造装置メーカーのKOKUSAI ELECTRIC(東証プライム市場に2023年10月上場)のような大手のほか、新たな産業である宇宙ビジネスを展開しているispace(東証グロース市場に2023年4月上場)といったスタートアップ企業も支援し、マグニフィセント・セブン(米大手テック企業群)のような世界に通用する企業の創出を目指している。

VCとの連携においては、プライベート・コーポレート・ファイナンス本部内の「ベンチャー・キャピタル支援室」が中心となり、グループ会社のSMBCベンチャーキャピタルはもちろん、国内外の様々なVCとの連携を支援。勉強会、セミナー、ビジネスマッチングなどを手掛けている。

M&A支援においては、プライベート・コーポレート・ファイナンス本部とM&Aアドバイザリー本部が連携することにより、M&Aという観点で多様なソリューションを提供している。

近年、「スイングバイIPO」にも力を入れている。これは、スタートアップ企業が大企業のアセット(資産)を活用することで、事業拡大や上場を目指す戦略である。宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速する「スイングバイ」という技術になぞらえた手法だ。スタートアップ企業は大企業の既存顧客・信用力・先端技術などを利用して事業を拡大できる一方で、大企業は新規事業を共同で創出したり、既存商品・サービスの機能を強化したりすることができる。

スイングバイIPOの概要
スイングバイIPOの概要(出典:SMBC日興証券)

社会課題解決を目指す企業と投資家をつなぐ“インパクトIPO”を推進

SMBC日興証券がスタートアップ支援で特に着目しているのが、世界的に注目を集めている“インパクトIPO”という考え方である。社会課題解決に結びつく技術やサービスを提供することで世の中に大きなインパクトを与える企業と、社会課題を解決したいと考える投資家をつなぐことを意味する。投資家の視点では、“インパクト投資”と呼ばれている。実は、冒頭に取り上げた雨風太陽は、NPOをルーツとして創業した企業で日本で初めて上場したインパクトIPOの事例として注目されている。

国際的には、インパクト投資を推進するGSG Impact(本部英国)の傘下にあるGSG Impact JAPAN(旧称:GSG国内諮問委員会)のインパクトIPOワーキンググループが、2024年5月に「インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス第1版」を公開した。SMBC日興証券は、このワーキンググループの一員として参加し、インパクトIPOを積極的に推進している。

インパクトIPOによって社会課題を解決するスタートアップが成長し、世界に通用する企業を数多く輩出する――SMBC日興証券は、その使命を担っているといえよう。

 ジャーナリスト堀純一郎が住友のDNAを探る
SMBC日興証券は、1918年の創業(川島屋商店として設立)以来、顧客や社会と共に歩み100年以上にわたって「共存共栄」の精神を証券会社として継承してきた。脈々と受け継がれるこの精神は、同社が目指すサステナビリティ(持続可能性)の原点となっている。
この歴史ある会社に住友の事業精神が融合することになったのが2009年10月。三井住友銀行への株式譲渡により、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の一員となったことだ。
以来、100年以上の歴史を持つ証券会社のDNAに住友のDNAが融合することにより、新たな歴史が作られようとしている。同社は、チャレンジャブルな姿勢と長年の実績で培ってきた安定感を併せ持つのが強みだ。この強みを生かしながら、社会課題の解決を目指すスタートアップ企業と投資家を橋渡しするパイプ役として、ますます社会に貢献することを期待したい。
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