住友と共創 ~ビジョンを描く~

三井住友ファイナンス&リース

“資源循環プロバイダー”としてサーキュラーエコノミーをけん引

東京・お台場のシンボルとして1999年に建設された高さ115mの大観覧車。2022年8月末に、お台場の再開発に伴いパレットタウンと共に惜しまれながらも営業を終了した。

この観覧車の解体工事を担当したのが、リサイクルビジネスを手掛けるアビヅ(本社名古屋市)と SMFLみらいパートナーズ(本社千代田区)がタッグを組んで設立した、設備・プラント処分元請事業を手掛けるSMART(本社名古屋市)である。SMFLみらいパートナーズは、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の戦略子会社だ。

実は、この観覧車のゴンドラなどの部材はリサイクルされている。そのことをご存じではない方が少なくないだろう。日本でのリース事業の草分けであるSMFLが、解体ビジネスと解体後の部材のリサイクルビジネスを手掛けた代表的な事例である。

2022年8月に営業を終了し、その後、解体されてリサイクルされた東京・お台場の大観覧車

廃棄をなくし、3Rからサーキュラーエコノミーへ

SMFLは従来、環境に配慮し持続可能な未来を実現するために、いわゆる3R(スリーアール)を展開してきた。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取った3つのアクションの総称である。

冒頭に示した観覧車の例はリサイクル事業の一貫で、このほか、風力発電で使われた羽根の解体とリサイクルも手掛けている。2030年には約80万tが廃棄されるといわれる太陽光パネルや、パソコン、EV(電気自動車)に搭載されているリチウムイオンバッテリーのリサイクルにも取り組み始めている。

リユース事業では、中古機械買取・販売のWebサイト 「RE-MACHINE」を展開し、この分野での第一人者として認知されるほど事業規模を拡大してきた。リデュース事業としては、グループ会社のSMFLレンタル(本社千代田区)が、パソコン、ネットワーク機器をはじめとしたIT機器のほか、計測機器などのレンタルやシェアリングを手掛けてきた。

SMFLがグループで取り組んでいる3Rとサーキュラーエコノミー

これらの3R事業を発展させた姿が、サーキュラーエコノミー(CE)事業である。SMFLは、脱炭素へ向けて太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー事業にも取り組んできたが、これらの事業だけでは脱炭素社会を実現できない。モノの製造から使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおいて、二酸化炭素を大量に発生させるシーンが多くあり、こうした二酸化炭素を抑制するためにCEの世界に踏み込むことにした。

そこで、2023年4月、全社横断組織として「CE推進WT(ワーキングチーム)」を発足させたのである。廃棄物が残っていた3Rと異なり、CEでは「廃棄はしない」という考え方に則っている。3Rを進化させ、徹底的に環境に配慮した循環サイクルを実現しようという戦略である。ちなみに、CEは世界的には2015年ごろに登場したコンセプトだ。

SMFLはこのコンセプトを具現化するために、各部門、グループ各社や株主、さらに顧客や業界団体などを通じた外部企業との連携を通じて、CEのサークル(輪)の完成を目指している。同時に、「CEのSMFL」というブランドを浸透させていく。

目指すのは「捨てない、捨てるモノがない世界」

このブランド形成へ向けて構築した独自のビジネスモデルが「SMFLサーキュラーエコノミーモデル 2030」である。このモデルでは、SMFLが持つ様々なケイパビリティ(例えば与信機能)をベースに、個別企業ごとにモノの所有・管理(リースやサブスクなど)を行うほか、循環型の社会デザイン事業(廃棄物リサイクルやコンサル、環境認証審査等)を手掛けるアミタホールディングス(本社京都市)と合弁で設立したサーキュラーリンクス(本社東京都)を通じて個別企業向けのコンサルティングを手掛けている。

さらに、自社で独自に開発した、SaaS(Software as a Service)型プラットフォーム「アセットフォース(assetforce)」の活用により、モノのライフサイクル管理を効率化する仕組みを提供し、顧客のモノの管理を支援する。リース事業を支える機能としてDX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組んでいる。

使用済みの資源を回収して再資源化する流れは一般的に「静脈」と呼ばれている。メーカーが製造して顧客に送り届ける流れを「動脈」と呼ぶことに対して、逆の流れをなぞらえた表現だ。SMFLは、メーカーを支援する「動脈ソリューション」だけでなく、「静脈ソリューション」にも注力しCEを推進している。

「SMFLサーキュラーエコノミーモデル 2030」の概念図

SMFLにとって、CEは社会課題解決の最重要テーマである。中期経営計画(2023~2025年度)では4つのテーマに挑戦しており、その1つが「更なる社会課題の解決」だ。その柱の1つとして「CEを実現していく第一人者としての活動」を掲げている。

経済産業省では、CEの国内市場規模は2030年には80兆円、2050年には120兆円に拡大すると予測している。日本には「もったいない」というモノを大切にする国民性があり、モノを長く使うという文化があるといわれるが、まだまだ改善の余地があるとSMFLでは見ている。世界に目を向ければ、2023年に80億人を超えた人口は2050年には約1.2倍の97億人に達すると国連では予測しており、それだけ必要とする資源量も増えていく。その結果、人間が地球上で持続的に生存していくために必要な資源には限りがあるという意味で、「プラネタリー・バウンダリー」という言葉が登場し、超えてはならない地球環境の境界を表す概念が提唱されている。

こうした国内外の背景を踏まえて、SMFLがCEで目指すのは「顧客、ひいては消費者の意識改革」である。「捨てない、捨てるモノがない」ということを意識して行動している人たちがどれだけいるだろうか。捨てない、捨てるモノがない世界の実現は地球規模では道半ばである。SMFLは、いわば“資源循環プロバイダー”としてCEをけん引することで、顧客企業、ひいては消費者の意識改革を促し、持続可能な社会の実現へひた走る。

 ジャーナリスト堀純一郎が住友のDNAを探る
リース業は1950年ごろに米国で始まり、日本では高度成長期の1963年、東西興業(同年2月設立、のちの住商リース)と日本リース(同年8月設立、のちのGEフィナンシャルサービス)の2社が設立された。その後、1968年に総合リース(のちの三井住友銀リース)が設立されている。これらの3社が起源となり、再編を繰り返して現在のSMFLに至っている。まさに日本でのリース業界の草分け的存在だ。
その歴史は約60年であり、約400年続く住友グループの中で、SMFLは新しい企業群に属する。産業発展の歴史を振り返ると、リース業は第3次産業に相当するが、DX、IoT(モノのインターネット)、シェアリング・エコノミー、AIなど新しい技術・概念を取り入れた、いわゆる第4次産業革命の真っただ中にある産業ともいえるだろう。
SMFLの株主は、住友の精神を脈々と受け継いでいる三井住友フィナンシャルグループと住友商事である。注目したいのは、住友家初代の住友政友(1585-1652)が商売上の心得を簡潔に説いた「文殊院旨意書(もんじゅいんしいがき)」に記されている「営業の要旨 第二条」だ。「わが営業は、時代の移り変わり、財貨運用の損得を考えて、拡張したり縮小したり、起業したり廃業したりするのであるが、いやしくも目先の利益に走り、軽々しく進んではいけない」(口語訳)。
金融から他の事業へと領域を拡大してきた同社。常に新技術を取り入れ、新しいビジネスモデルを構築し、CEで社会に貢献するSMFLには、約60年の歴史の中にも、こうした創業者精神が宿っているに違いない。
一覧に戻る

PageTop