つぼいひろきの住友グループ探訪
三井住友ファイナンス&リース
リマシーン東日本ヤード
三井住友ファイナンス&リースが2019年に開設した中古機械設備を展示する倉庫で、日本最大規模を誇る。工作機械のほか、成形機、医療機器、建設機械などが取り扱われている。
三井住友ファイナンス&リースが2019年に開設した中古機械設備を展示する倉庫で、日本最大規模を誇る。工作機械のほか、成形機、医療機器、建設機械などが取り扱われている。
テニスコート41面分! なんと3253坪もある倉庫だ。中で働く人は必要に応じて、内部を自転車で行き来するほどだという。ここは、2019年に三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)が開設したリマシーン東日本ヤード。倉庫内にあるのは、中古機械が数百台余りで、最も多いのは工作機械だ。工作機械とは、例えば、スマートフォンの金型をつくるために、金属や樹脂を削ったり研いだりと加工して、機械や部品をつくり出すための機械で、マザーマシンとも呼ばれる。「中古機械を売買することで、あるところでは不要となっていた機械に新たな活用の場を生み出しています。日本のものづくりの一端を担うビジネスだと思います」と話すのはリマシーン営業部の松本博之さんだ。
コンピュータで数値が制御され、幅広い加工に対応できる立形マシニングセンタや横形マシニングセンタ、プレス機や研削盤など、倉庫には大きさや形が様々な機械がカテゴリー別に並んでいる。
なぜ、SMFLが中古機械の売買を行っているのだろうか? 始まりはリース満了物件だったそうだ。工場の設備投資には、初期投資費用の負担を少なくしながら、最新設備に入れ替えられるリースが活用される。リースのスタイルには、物件の購入代金や保険料などおおむね全額を分割してリース料として払うファイナンス・リースと、リース期間満了後の価値(残価)に着目し、物件代金から残価を差し引いた部分のみをリース料として払うオペレーティング・リースがある。SMFLでは、ファイナンス・リースが主流の時代から、他社に先駆けて中古物件の売買事例を重ねて、査定能力を向上させてきた。
さらにオペレーティング・リースのニーズが高まってくるとそれに応え、3年、5年使用した後にどれくらいの価値が見込めるのか、プロとしての見極めに注力していった。次第にリース事業と密接につながる中古機械の売買が増え、現在では工作機械や半導体製造装置の中古売買では、国内トップクラスの取り扱い実績を誇る。その実績はデータとして蓄積されて、ものへの知見や査定能力を反映した的確な価格設定によって、お客様の幅広いニーズに応え、素早いビジネス展開をサポートできている。
現在、リマシーン営業部で扱う中古機械のうちの多くは外部より仕入れている。遊休化した設備や工場のラインの入れ替え、閉鎖、移転などで不要となった機械設備を買い取り、必要とするお客様に販売する。「SMFLのリマシーン営業部の特徴は、クリーニングが必要な機械は、機械清掃のエキスパートが状況を判断して作業する点です」と松本さんは話す。機械の状態に合わせて塗装が剥がれないように洗剤やブラシ、力を加減して磨き上げる。メンテナンスは専門のエンジニアが担当する。長年使いこまれた機械に対しては、工作機械メーカーとの協働で、全て分解してクリーニングし、不足箇所は部品を交換して組み立て直し再生するリファービッシュ※を実施する場合もあるそうだ。
※新品に準じた状態に整備すること
「お客様にとって、中古機械を導入するメリットは主に2つあります。1つは、新品に比べて安価なため、設備導入コストを抑えられて、製造原価を低減できる点です。もう1つは、短期間に設備を導入できることです。購入時に仕様を決めるなど納品までに時間がかかる新品と違い、中古機械の場合は、ここで整備済みの現物を目で見て確認して購入を決定すれば、すぐに工場へ搬入して稼働できます」と松本さんは説明する。生産計画が立てやすいだけでなく、受注ピークに合わせて生産体制を整え、多様化する取引先の要求にいち早く応じられる。設備面でビジネスチャンスを逃さずに済むというわけだ。
同社では2008年にウェブサイト『RE-MACHINE』を立ち上げている。
お客様は、ウェブサイトで物件情報を検索して、データや仕様を確認した上で、実物を確認するために倉庫へ足を運ぶケースがほとんどだそうだ。松本さんたちリマシーン営業部にとってうれしいのは、「探していた機械が見つかった」「急ぎの受注にも、これで対応できる」と言ってお客様から喜んでもらえること。そして「『整備のおかげで、導入後に不具合が少ない』と言って、リピートしていただく機会も増えてきて、仕事に誇りを感じています」と松本さんは話す。
廃棄ではなく、整備で中古機械をいかすビジネスにいち早く取り組んできた同社。「お客様の幅広い『買いたい』『売りたい』に応え、廃棄物を最小限に抑えるというサーキュラーエコノミーの実現に向けて貢献しています」と松本さんは話す。今後は、さらにメーカーや販売会社との協働で、新たな価値を生み出すサービスを目指すほか、同社が開発した中古売買の会員制サイト『assetforce market』などで、売却ニーズと購入ニーズのマッチングや、リモートによる下見などデジタルツールを利用した展開も検討している。
倉庫内は10m以上の高さがある天井に巨大クレーンが3基あり、それぞれ20トンの重さを吊り上げられる仕様。お客様が機械の周囲をぐるりと見て回ったり、ドアを開閉できるように十分な余裕があり、搬出入時の安全性にも考慮していました。動作確認ができるように電源設備も整えて、配慮の行き届いた展示になっていました。