つぼいひろきの住友グループ探訪
住友重機械工業 愛媛製造所 新居浜工場
産業用クレーンをはじめ、様々な産業機械や搬送システムを製品開発から製造、
アフターフォローまでワンストップでサービス提供する、住友重機械の基幹工場。
産業用クレーンをはじめ、様々な産業機械や搬送システムを製品開発から製造、
アフターフォローまでワンストップでサービス提供する、住友重機械の基幹工場。
高さ90m、重量2000t、吊り荷重300tのジブクレーン。
吊り上げた荷物を前後左右に運ぶ、天井クレーンを製造している。
愛媛県新居浜市に位置し、瀬戸内海に出荷用の自社岸壁を持つ。1888年に創業。1912年に自社の設計図による天井クレーン1号機を生産して以来、106年の歴史がある。
住友重機械工業の愛媛製造所 新居浜工場は新居浜駅から車で15分の所にある。とはいえ、町中を5分も走ると巨大なクレーンが見えてきた。同社は106年前から、人力では運べない鉄鉱石などの原材料や、造船の部品などを運ぶためのクレーンを、製品開発から製造、アフターフォローまで一貫して行っている。要するに、デカイものを運ぶデカイ機械を作っているのだ! 日頃ペンより重いものを持たない仕事をしている身としては、デカイというだけでロマンを感じる。正門を入るとすぐに、巨大クレーンの全貌が見えた。高さ90m、重量2000t、吊り荷重300tの旋回するジブ(腕)を持つジブクレーンは、下から見上げると特殊なロボットのようだ。ジブクレーンは主に造船に使われるとのこと。デカイわけだ。
ジブクレーンの腕にあたるジブ。
ジブクレーンの操縦席は、ロボットアニメ好きに はたまらない空間。床は一部ガラス張り。操縦 者は、吊り荷の側にいる人の合図に添って、 吊り荷の位置を調節しながら吊り上げていく。
ジブクレーンの腕にあたるジブ。
ジブクレーンを支える脚部。
ジブクレーンの製造現場を訪ねると、脚部など部品が想像以上に大きくてびっくりした。まるで小人になって巨大なプラモデルのパーツを見上げているかのようだ。工場というと同じ部品がレーンのように運ばれている印象があったがそうではない。同社では注文に合わせて、鉄のプレートを切断して加工、組み立てをするオーダーメイド方式を取っているため、製造現場には全て違った部品が並んでいる。
実際にジブクレーンに上らせてもらった。まずは外階段で脚部の辺りまで上る。地上から15m程度だが、すでに高くて怖い! ! 脚部から上部へと続く柱の中はエレベーターで上る。エレベーターを出ると、柱の外には地上50mの絶景が広がっていた。工場の屋根が小さく見える。そこから操縦室までさらに外階段を上ると聞き、思わず手すりを握る手に力が入った。
操縦室の中はゆったりと作られていた。操縦者は、地上からの合図に従ってジブを操縦し、吊り荷を目的の位置に運んでいくそう。肉眼でも位置を調整しやすいように、操縦室は床が一部ガラス張りになっている。そこで今度は巨人になった気分に……とはならなかった。やっぱり、怖い(笑)。しかし、同社の出荷用岸壁で稼働中の様々なクレーンを見ていると、ふとロボットアニメの主人公になったみたいで、誇らしい気持ちになった。高さは人の心を大きくするらしい。この油断が4コマ漫画(記事の末を参照)につながるのだけれど……。
ジブクレーンを降り、次に天井クレーンを製造する建屋を訪ねた。天井クレーンは、工場の天井付近の壁と壁の間に床と平行に設置され、吊り上げた荷物を前後左右に運ぶ。納品先の建屋の大きさに合わせて製造するため、幅は1.5m〜200m、吊り荷重も2t〜500tと幅広い。なんだか荷物を運ぶ様子に見覚えがあると思ったら、ゲームセンターにあるクレーンゲームだ! 実は身近なところでクレーンと接していたのだ。ジブクレーンを降り、次に天井クレーンを製造する建屋を訪ねた。天井クレーンは、工場の天井付近の壁と壁の間に床と平行に設置され、吊り上げた荷物を前後左右に運ぶ。納品先の建屋の大きさに合わせて製造するため、幅は1.5m〜200m、吊り荷重も2t〜500tと幅広い。なんだか荷物を運ぶ様子に見覚えがあると思ったら、ゲームセンターにあるクレーンゲームだ! 実は身近なところでクレーンと接していたのだ。
ここまで巡ってとても気になったのは、「どうやって納品するのか」ということだった。製造部長の辰巳さんによると「いくつかに分けて、海で使うジブクレーンなら海運、工場で使う天井クレーンは陸送することが多い」そう。製造工場で組み立てて品質・安全確認が済んだ製品を解体し、納品先でまた組み立ててようやく完成となるのだ。
ボクが最も印象的だったのは、徹底した安全への取り組みだ。大きく分けて「製品、お客様、従業員」の3つの安全対策がある。「製品」は、吊り荷の揺れを最小限に抑えるなど、設計段階で綿密に安全対策が行われている。また、出荷前立会という製品の安全確認を行う。
10数人の発注者側の担当者が、軍手をはめて製品を触っていくのだ。溶接した所が滑らかに研磨されていないと手袋が引っかかり、繊維が残って立つ。また、つまずきそうなボルトの突起やわずかな隙間があれば改善する。
実際に製品を使う「お客様」に向けたメンテナンス研修もしており、納品先の担当者が海外から研修を受けにくることも珍しくないという。大切にメンテナンスを行った結果、中には1925年製のクレーンも現存しているというから驚きだ。そして当然のことながら、同社は「従業員」への安全教育も徹底している。毎日始業前には、作業ルールや業界全体の事故事例を書いた、日めくりカレンダーを読み合わせる。さらに、至る所に安全標語を掲示し、スピーカーから従業員の子どもの音声で安全を呼びかけるほか、ふとした瞬間の油断を無くすため、全ての従業員が安全教育装置で事故を疑似体験することも重視している。徹底した安全対策が、106年の歴史を支えているのだ。
ふと、日々漫然と食べているものも同社のクレーンで作られた船で運ばれているのかも知れないと、親近感を持った。そして、クレーンの名前に愛着がわいて、「ジブ、いつもありがとう!」と、そっと呟いた。
創業は1888年。住友新居浜分店の工作係として、別子銅山で使う機械器具の購入・修理を担当したことが始まり。 1912年に自社の設計図に基づく「天井 クレーン1号機」を製作し、産業用クレーン事業が開始。写真上が1932年製、写 真下が1937年製のクレーン。
今回から、つぼいひろきさんにマンガコラムをご担当いただくことになりました。
まったくの偶然ですが、つぼいさんのご両親は元住友グループ社員でいらっしゃるとのこと。初取材から新居浜に伺えることにもご縁を感じ、スタッフ一同、普段以上に気合が入っておりました。
今回の見どころは、何といってもクレーンの大きさです。
とくに全長90mもあるジブクレーンの迫力を、みなさまに臨場感とともにお伝えするにはどう写すのが良いか、現場で試行錯誤しました。
実は、メーンカットでジブクレーンの脚部の辺りに、今回ご案内くださった辰巳さんにお立ちいただいています。手すりにつかまりながら、こちらに向かって片手を上げてくださっているのです。よーくご覧いただいてようやく見えるくらいの小ささですが、こちらが実際の人間とジブクレーンの大きさの対比です。
本文にもあるように、ここまで大きな製品を、手で触れながら細かく安全確認を行うとは、どれほどの根気と高い安全意識によるものかと、頭が下がります。