つぼいひろきの住友グループ探訪
サミット酒田パワー バイオマス発電所
日本海の酒田北港に位置する、東北で最大級のバイオマス発電所。
発電容量は5万kW。2018年8月に商業運転を開始した。
日本海の酒田北港に位置する、東北で最大級のバイオマス発電所。
発電容量は5万kW。2018年8月に商業運転を開始した。
再生可能エネルギーの一つであるバイオマス発電は、主に未利用材や間伐材などの木材から作った、木質チップなどを燃やして発電する。この環境への負荷が少ない発電に、ボクは以前から興味を持っていた。というのも、家族4人で生活し、自宅で毎日パソコン作業をしているボクは、めちゃくちゃ電気のお世話になっているからだ。
今回伺ったサミット酒田パワーのバイオマス発電所は、東北最大級のバイオマス発電所で、5万kWの発電容量を誇る。国内の木質チップ年間16万tと、輸入した木質ペレット年間10万tを主な燃料としている。特長は発電量の40%を占める国内木質チップが山形県産ということだ。地元の林業への貢献にもつながっている。木質ペレットは約2カ月に一度、カナダから輸入している。発電所の対岸のペレット倉庫に最大約2万9600t(約2.5カ月分)を保管し、トラックで毎日発電所へ輸送している。
発電所は大きく分けて、各燃料の受入棟、水蒸気を作るボイラ棟、電力を起こすタービン棟の3つで構成されている。
敷地面積約4万5000m2。広々した敷地にボイラ棟、タービン棟、燃料の受入棟など発電施設が並んでいる。
ペレット倉庫内部。1日に平均してトラック約25台分(300t)を発電所へ移送する。
木質チップや木質ペレットは、各受入棟から各タンクへ運ばれ、ボイラ棟に送り込まれる。このとき圧巻だったのは、20tの木質チップをトラックからチップ受入棟に搬入する作業だ(写真1~3)。ダンパーで巨大なトラックごと持ち上げるのだ。その角度50度! コンテナから一気にチップを放出し、ものの2分ほどで作業を終えてしまった。バイオマス燃料がボイラ棟に運ばれたら、いよいよ発電作業だ!
国内の間伐材などから作った木質チップを、循環流動層ボイラに燃料として投入する。ボイラの底部から空気を吹き込み、効率的に燃焼させる。その熱で水を沸かし、水蒸気で発電機のタービンを回すことで発電する。
ボイラの配管はまるで迷路のよう!
ボイラ棟の内部に入ってまずびっくりしたのは、全高45mの巨大な循環流動層ボイラだ。燃焼中のボイラは最大温度約890℃にもなり、熱膨張でボイラが20cmほど伸びるため、周囲に配管されているパイプと接触しないように隙間をあけて設置されているのだ。また、パイプの数の多さも目を引いた(写真4)。ボイラには複数のパイプを通して燃料を投入する。そして、ボイラの底部から空気を吹き込みながら、高温の粒子(砂)とともに勢いよくかき混ぜることで、効率よく燃焼させる。ボイラで作られた水蒸気により蒸気タービンが回り、連動して発電機が回ることで発電するしくみだ。
水蒸気を追うようにタービン棟へ移動すると、広々としたスペースの中央に蒸気タービンと発電機が余裕を持って設置されていた。巨大なボイラに比べると随分コンパクトだ。しかし、このタービンを回すのにあれだけのボイラと燃料が必要なのだと考えると、発電することの大変さが分かる。今自分が電気を使えていることに感謝しつつ、環境面への負荷を考えると、今後再生エネルギーの割合が増えていくといいな、と思った。
バイオマス発電所の周囲には風力発電機や太陽光パネルなどもある。
今回、社長の高瀬正道さんに直接お話を伺えた。高瀬社長は「人」を大事にしている。発電所で働く「人」のために、中央管理室におしゃれなカフェスペースを設置。24時間3交代制勤務で、緊張感の求められる仕事だからこそ、めりはりを大事にしていると言う。安全対策でも、安全装置などのハード面はもちろん、朝会を毎日8時から全員で実施し、安全教育を徹底している。中でも重要視しているのがコミュニケーションの品質だ。例えば、発電所内でのあいさつ励行が防犯対策としても役立っている。また、事務所では社長の机を技術部長など各部長と近い位置に配置。課題を即座に共有し、即断即決できるようにしている。
次に、地域の「人」。従業員26人のうち20人が地元・Uターン採用だという。全員が未経験者で、正式稼働に向けて2年かけて育ててきた。地元出身者の雇用も大きな地域貢献だ。取引先である地元林業の会合に顔を出したり、地域住民への説明会をこまめに実施したりしている。普段から交流の機会をつくり、理解を深めてもらうことで、有事の際に協力、応援してもらえるのだと言う。ペレット倉庫に描かれた壁面アート「WELCOME TO SAKATA」は、酒田港を訪れるクルーズ船への歓迎のメッセージで、これも「人」の交流を活発にさせるためのものだ。
そして、高瀬社長という「人」も印象的だった。自社ブランディングに遊び心があり、ウェブサイトは社長自らがドローンで撮影した映像など、動画が充実。動画を見るだけで、同発電所のことが理解できる。ターゲットは一般の人だけではない。同業者と意見交換をする際に、事前に動画を見てもらうことでより深い議論を目指している。取材の後も「採用面接と、夜は地域の方への説明会なんです」とおっしゃっていた。
高瀬社長への取材を通して、再生可能エネルギーを活用した電力事業の意義に加え、社内外でのコミュニケーションの重要性をしみじみ感じた。
今回サミット酒田パワーに取材できると決まったときから、つぼいさんは「バイオマス発電所の内部とは、どうなっているのでしょうね!」と興味津々で、スタッフ一同期待で心を躍らせていました。
つぼいさんが本文にも書いているように、発電機を動かすために必要な木質チップの量と、木質チップを燃やす循環流動層ボイラの大きさには、スタッフ一同ただただ圧倒されました。
そして、取材の帰り道につぼいさんは、「発電の仕組みにも驚きましたが、今回は「人」が心に残った取材でもありました」と、しみじみ感動していました。「エコという意味で、電気を作る側と使う側の『人』、高瀬社長の人柄の『人』、地元採用の『人』、地域の企業や住人とのコミュニケーションの『人』……」。
というのも、バイオマス発電のしくみをイラストと文章で正しくお伝えするために、高瀬社長に取材時間を30分も延長していただいたのです。高瀬社長は取材後ご予定が迫っていたにも関わらず、こちらがきちんと理解できるまで、丁寧に説明してくださいました。
深い感謝とともに、スタッフ一同すっかり高瀬社長のファンになりました。
サミット酒田パワー株式会社ホームページ
http://www.summit-sakata-power.co.jp