つぼいひろきの住友グループ探訪
SCSK netXDC千葉第2センター
SCSKはビジネスに必要なすべてのIT(情報技術)サービスをフルラインアップで提供。2015年に竣工したnetXDC千葉第2センターは、データセンターの安全性の国内基準で最高の「ティア4」を取得している。
SCSKはビジネスに必要なすべてのIT(情報技術)サービスをフルラインアップで提供。2015年に竣工したnetXDC千葉第2センターは、データセンターの安全性の国内基準で最高の「ティア4」を取得している。
サーバー室は高さ3.2mで広々とした空間。空調は水冷式で、ビニールカーテンで仕切られ冷気を床面から噴き上げる「コールドアイル」と、サーバーの排熱を天井から上に逃がす「ホットアイル」に分けているため、冷気と排熱が混ざらず、最低限の空調で最適な稼働温度を保つことができる。
ここは千葉県印西市。千葉県が構想する「成田・千葉ニュータウン業務核都市」の中にあり、東洋経済新報社の「住みよさランキング」総合評価で7年連続1位を獲得し続けたことでも知られている。断層や地盤の状況に基づく災害リスク評価の結果、近年は国内外の大企業のデータセンターが集まるようになってきた。
そんな印西市に、2002年にいち早くデータセンターを設立したのが、SCSKだ。SCSKは1980年代から30年以上にわたり、データセンター運用の実績を持つ。今回ボクがお邪魔したのは、2015年4月に開設したSCSKのnetXDC千葉第2センター。新しく設立されただけあって、25年の同社のデータセンター運用実績が凝縮された最新設備のスゴいところだという。どんなにスゴいのか、さっそく見学させてもらおう!
と、意気揚々と建物に入ろうとしたら、途端に警告音が鳴り響いた。なんだなんだ!?と驚くボクに、「入り口には金属探知機を設置しています。このセンサーは、最も高いセキュリティーレベルが設定されていて、ベルトのバックルにも反応するんです」と、SCSKのnetXデータセンター事業本部の大久保洋さんは説明する。事前に持ち込み申請した機器類は、横にあるX線検査装置に全部載せていたので大丈夫だと思っていたが……、「不審者はもちろん、危険な物品や不審物も入り口で確実に排除する」という確かなセキュリティー対策を、身をもって実感したボクだった。
ちなみにnetXDC千葉第2センターでは、カメラや各種センサー、24時間有人監視、ICカードや生体認証を組み合わせた本人確認、サーバールーム監視の架列カメラや共連れ防止など、7段階のセキュリティーチェックを備え、テロ対策も万全だという。
では自然災害、たとえば地震への対策はどうだろうか。大久保さんに建物の地下に案内してもらう。するとそこには、地下30mに打ち込まれた基礎の上に、天然ゴム系積層ゴムなどの横揺れ対策が施されていた。「基礎免震の上に建物が載ることで、建物を地面から浮かせた状態になっています」と大久保さん。そのため地震が起きても建物に地面の揺れが直接伝わることなく、揺れを軽減するという。各フロアには、縦揺れ対策として垂直制震ダンパーを取り入れており、地震による建物の揺れを最大80%減衰できるとのことだ。
さて、データセンターといえば、とにかく大量の電力を消費するというイメージがある。常に動作し続けているサーバーラック、そのサーバーラックの安定稼働をサポートする空調、種々のセンサーなど、安全・安心な運用を続けるには膨大な電力が必要だ。その一方で、過剰な電力消費は昨今の環境問題で課題となっている。
実はnetXDC千葉第2センターは、こうした環境対策でも最先端の技術を採用しているのだ。外の冷気を取り入れるとともに、フリークーリングシステムを併用した「外気冷房システム」を採用。季節に合わせ、外気運転、混合運転、循環運転をコントロールすることで、空調熱源の電力負荷を大幅に軽減している。米国暖房冷凍空調学会のデータセンター推奨温室度条件にも適合しているという。「『データセンター全体の消費電力』を『IT(情報技術)機器による消費電力』で割った数値はPUE(Power Usage Effectiveness、電力使用効率)と呼ばれ、1.0に近づくほど高効率になります。netXDC千葉第2センターは国内最高レベルの1.3の実現を目指し、グリーンITに貢献しています」と大久保さん。外の自然環境を上手に活用することで、環境に優しいデータセンターになっているのだ。
電源は、二つの系統で電気を供給する「特別高圧 2系統受電」。これにより、どちらか1系統で障害が発生しても、電力を供給し続けることができる。仮に2系統同時に停止した場合は、UPS(無停電電源装置)から電気を供給し、10分間供給可能。その間に発電機が起動し、無給油で72時間電力を確保する仕組みだ。UPSも、障害発生時には予備系に切り替わるブロックリダンダント方式を採用しており、電力供給が止まる可能性は非常に低い。
一番冷気を必要とするサーバー室も、昔のデータセンターのように必要以上に冷やす必要がない。サーバーラック前面は冷気を出すコールドアイル、排熱するサーバーラック背面は、ビニールカーテンで仕切りを作って熱を天井に逃がすホットアイルとしているので、空気が混じり合うことがなく、高い冷房効率を実現しているのだ。
電力を供給する電源設備も、各所に何重もの冗長化を施しているので、電気が止まる可能性は非常に低い。2系統使って電力会社から電気を受電する「特別高圧 2系統受電」を取り入れているほか、UPS(無停電電源装置)も自家発電機も予備を備えており、電力会社からの供給が止まっても72時間は電力が確保される。このスキのない冗長化により、netXDC千葉第2センターは、日本データセンター協会が制定するファシリティスタンダードの最高レベル「ティア4」を取得している。
自家発電機はセンター建物の外にある。大久保さんの案内で下を見下ろすと、発電機5機が並んでいるのが見えた。その向こうには住宅地や森が広がり、左手は建設中のnetXDC千葉第3センター(2022年春に稼働予定)、右手には巨大な物流センターやデータセンターが建てられている。「印西市にはこれからも次々と海外企業のデータセンターが建設される予定なんです」と大久保さん。それに伴い、住宅地も拡充しており、まさに成長中の地域だという。
その先駆者となったのがSCSKのデータセンターだ。「かつてはモノが集まるところに人や仕事が集まったが、今やデータが集まるところに人やモノが集まるんだな」と、社会の進化を思わずにはいられないボクだった。
SCSKのデータセンターがある千葉県印西市の「印」は、印旛沼が由来です。印旛沼は千葉県最大の湖沼で、下総台地の浸食谷の出口が利根川の堆積物によってせき止められてできた沼です。江戸時代から水運、水害対策、新田開発などを目的に、干拓事業が何度も行われてきたのは特に有名です。現在も、水は農業・工業用水や県営水道として京葉工業地帯に送られています。つまりインフラとして機能し続けてきたわけで、「情報のインフラ」であるデータセンターと実はつながっているのではと思いました。