住友家初代・住友政友が晩年に遺した言葉。手代の勘十郎にあてて商人の心得を示した書簡「文殊院旨意書」の冒頭に記されている。「商事は言うに及ばず候へ共、萬事精に入れられるべく候(商売はいうまでもないが、何事も粗略にせず、すべてのことについて心を込めて丁寧慎重に励むように)」と、商売人である前に誠実と努力を重んじ、人として人格を磨くことを説いている。
この一文に続いて、文殊院旨意書には「相場より安いものが持ち込まれても、出所がわからないものは盗品と心得よ」「誰であろうと宿を貸したり、物を預かったりするな」「他人の仲介や保証はするな」「掛け売り、掛け買いはするな」という当時の商売における具体的な注意事項が示され、最後に「他人がどのようなことを言っても短気になって言い争うようなことはせずに、繰り返し詳しく説明するように」と、人と接する際の心構えが記されている。