故事成語に「報本反始(ほうほんはんし)」という言葉がある。「根本に立ち返ってその恩を改めて肝に銘じ、天地や先祖の恩恵や功績に感謝し、これに報いる決意を新たにする」という意味だ。これにならって住友は同様の意味を持つ「国土報恩」を理念として掲げている。
二代目総理事の伊庭貞剛は、煙害問題で荒れ果てた別子の山を見て次のように考えた。「別子の全山は古来鉱山の作業に欠くべからざる木材、および木炭用として、乱伐に次ぐ乱伐を以てした結果、かつて積翠(緑)ゆたかなりし山山は、みるかげもなう憔悴し、年年出水(洪水)のため、荒れにあれた山肌は到るところ、磽かくたる(やせた)地肌を露出していた。寛厚(寛大で温厚)な自然が、人間のほしいままなる営為を咎めず、いきどおらず、一木一草、惜しみなく与えつくしてくれた、その洪恩(大きく深い恩恵)をおもっては、このまま別子の山を荒蕪の(荒れ果てた)ままにまかしておくことは、天地の大道に背くのである。どうかして乱伐のあとを償ひ、別子全山を旧(昔)の“あをあを(青々)”とした姿にして、之を大自然にかへさねばならない」