「自利利他公私一如」
じりりたこうしいちにょ

  • # 住友の事業精神
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新居浜製錬所(1890年の様子。写真提供/住友史料館)

「自利利他」とは仏教用語で、「自らの仏道修行により得た功徳を、自分が受け取るとともに、他のためにも仏法の利益をはかる」という意味。「公私一如」とは、「公」に思えることも「私」に通じ、この二つは相反せず一つのものであるという意味だ。

住友の事業は、「住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」と、「公益との調和」を強く求めている。例えば、別子銅山の近代化を推し進め、“別子の産業革命”を成し遂げた初代総理事・広瀬宰平は当時、「一意殖産興業に身をゆだね、数千万の人々と利を共にせん」と述べている。一国の富とは、人民の富にして政府の富にあらず。自分が儲けるだけではなく、国民たちと利を分かち合うということだ。事実、広瀬は別子銅山の麓、瀬戸内海に面した新居浜の惣開に製錬所を開設し、地域が工業都市として発展する礎を築いた。

また、二代目総理事・伊庭貞剛も「住友の事業は、住友自身を利すると共に国家を利し、且つ社会を利する底の事業」という方針を執り、三代目総理事・鈴木馬左也も「徳を先にし、利を後にする。徳によって利を得る」という自説を語っている。

これらは現代でいうCSR(企業の社会的責任)にも通じるものだ。事業活動に責任を持ち、社会に貢献する姿勢は、別子銅山の時代から住友の中に脈々と受け継がれている。

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