「自利利他」とは仏教用語で、「自らの仏道修行により得た功徳を、自分が受け取るとともに、他のためにも仏法の利益をはかる」という意味。「公私一如」とは、「公」に思えることも「私」に通じ、この二つは相反せず一つのものであるという意味だ。
住友の事業は、「住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」と、「公益との調和」を強く求めている。例えば、別子銅山の近代化を推し進め、“別子の産業革命”を成し遂げた初代総理事・広瀬宰平は当時、「一意殖産興業に身をゆだね、数千万の人々と利を共にせん」と述べている。一国の富とは、人民の富にして政府の富にあらず。自分が儲けるだけではなく、国民たちと利を分かち合うということだ。事実、広瀬は別子銅山の麓、瀬戸内海に面した新居浜の惣開に製錬所を開設し、地域が工業都市として発展する礎を築いた。