大正15(1926)年、住友合資会社に入社し、主に労務関係の職についていた俳人の山口誓子が詠んだ一句。
誓子は昭和32(1957)年2月に、住友金属鉱山の招きで新居浜を訪れ、「旧別子」へ吟行した。山上は雪に覆われていたが、一部に赤黒い岩「大露頭」(地表に露出している鉱床のこと)が顔を出していた。
大露頭は元禄3(1690)年、愛媛県石鎚山系の南斜面で発見され、これが別子銅山開坑の糸口となり、その後、283年間にわたって操業を続けることとなった。つまり住友発展の、記念碑的風景ということになる。
この句は周りの白い雪と、赤黒い大露頭との美しいコントラストを見事に切り取っているが、同時に、その下に眠る鉱脈の力強いエネルギーを詠んでいる。