1824年、住友家第9代・友聞が書いた「江戸店諭示書」の一部である。
「最近、若い店員(社員)が不行儀である。管理職がきちんと管理をしていないことが問題だと聞いている。若い者が悪い遊びを覚えて問題を起こした場合は、容赦なく叱りなさい。かわいそうだと思い、放っておいたら、その者はいよいよ学ぶ機会を失ってしまう。“叱る”ことが主家の慈悲だと気づいていない。(中略)江戸の町の子どもを持った親たちは、住友家の家風が非常によいので、子どもたちを住友へ務めさせたいという人が多かった。人格の優れた有能な“よき人”に育ててくれると頼りにされているのだ。もし他人のそしりを受けるような不埒な者が出た場合は、管理職の責任は免れない」と説いた。
この友聞の言葉の背景には、当時の住友家の状況が関係している。1807年に友聞が当主を継ぐ前に、2代続いて主人が亡くなり、傾き掛けた住友家の立て直しが必要だったのだ。江戸初期から続く家格と名誉を保つために、管理職クラスの店員(社員)へ向け、「住友家で働くプライドを持って、人を育てるべし」と鼓舞激励したのだ。