前回までは“石山の高士”、あるいは“心の人、徳の人”などと評され、住友の近代化に大きく貢献した第二代総理事 伊庭貞剛をレポートした。ここからは伊庭の跡を受け、住友の近代化路線をより堅固に推し進め、発展させていった第三代総理事 鈴木馬左也の人となり、事業手腕などについて伝えていく。
鈴木馬左也が総理事の座に就いたのは、まだ四十四歳。先代・伊庭が五十四歳のときだったのに比べ、若く働き盛りだったことがわかる。その上、大正十一年に病没するまでの十九年間、住友のトップの座にありながら、住友の近代組織構築に務める一方、「条理を正し、徳義を重んじ、世の信頼を受ける」「国益を先にし、私利を後にする」など、忠孝の精神を基にした経営方針で事業の拡大を押し進めた傑物といえる。