もうひとつ伊庭から学ぶことがあります。明治27年(1894)、伊庭が銅山に登った時に、荒れた山を見て、「別子の山を荒蕪するにまかしておくことは、天地の大道に背くことだ。」、人間というものは、自然の一部であるはずなのに、こんなことをして良いのだろうかと考えます。これは東洋の思想です。西洋的な考えや、アメリカ的な考えでは、フロンティア精神、開拓の精神であり、人間が一番偉いということになります。ところが、東洋的な考えでは、人間は自然の一部である、だから自然を損なうと必ずしっぺ返しが来るということになります。それで山に木を植えたわけです。多い時で年間200万本以上の木を植えており、それによって山に豊かな緑がもどっています。この植林の思想が、引退した時の伊庭の中心的な思想となってきます。