2018年度「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」1億319万円余、および「アジア諸国における日本関連研究助成」4,984万円余の助成を決定

1.2018年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、27年に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
今年度は、2018年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内120件、海外45件)の中から、助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 39件、助成金総額 6,763万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):767件・15億9,646万円>

一例:

宗教法人 (愛知県 しん しろ
絹本著色 三千 さんぜん 仏名 ぶつみょう 宝塔図 ほうとうず 保存修理事業(鎌倉時代)
助成金額29万円

「三千仏名宝塔図」(重要文化財)は、14世紀室町幕府を開いた足利尊氏が祈願寺とした冨賀寺に寄進したものと考えられており、三千仏名経の経文即ち仏名を書き連ねて、宝塔(十三重塔)・宝光(放射光)を形成する他に類例のない仏画です。
しかしながら、経年の使用により横折れが著しく、また本紙中央縦方向には大きく糊浮きが生じるなどの損傷が進んでおり、修復が急がれています。

一例:

法華 ほけ だけ 薬師寺 やくしじ 住職 福嶋 龍法(宮崎県 東諸県郡 ひがしもろかたぐん
伊東 いとう すけ はる 奉納墨書天井画修復事業(桃山時代)
助成金額284万円

本天井画(宮崎県指定文化財)は、天正遣欧少年使節のリーダーとして有名な伊東マンショの父、伊東祐青が天正3年(1575)に法華嶽薬師寺に奉納したものです。表面には雲龍図が描かれ、裏面に書かれた「虎千代麿」は伊東マンショの幼名と言われています。このことから、伊東マンショの幼名を記す唯一の物証としても貴重な資料とされています。現在、点状の汚れや漆箔の浮き上がりなどが見られる状態にあり、修復が急がれています。

2.海外

助成対象 18件、助成金総額 3,556万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):321件・7億6,065万円余>

一例:

サンフランシスコ・アジア美術館 修復部長 キャシー・ギリス
サンフランシスコ・アジア美術館(アメリカ)所蔵「住吉祭礼図屏風」の修復
助成金額26,000ドル

「住吉祭礼図屏風」は、多くの参詣者で賑わう住吉大社の境内と住吉大社から御旅所まで練り歩く神輿渡御の行列を描いた屏風で、伸びやかな表情をもつ人物描写が特徴的で躍動感に溢れ、江戸初期に風俗画を得意とした町絵師によって描かれたと思われる祭礼風俗図の優品です。現状は、絵の具の剥落、破れ、穴、汚れ、欠損等が多く、過去の度重なる不適切な修復による悪影響もあり、安全に開くことも困難であるため修復が急がれています。

一例:

ベトナム国立歴史博物館 館長 グエン・ヴァン・クォン
ベトナム国立歴史博物館所蔵「神勅」の修復
助成金額200万円

「神勅」は、ベトナムを統治する皇帝が国内各地の神々に降ろした命で、ベトナムの民間信仰や国家権力の神界支配に関わる大変貴重な歴史的史料です。現状は、破損や水損により欠失した部分が多く認められ、また過去の不適切な修理もあり適切な処置による修理が急がれています。日本の修復業者の指導によりベトナム人修理技術者の養成も目的としています。

2.2018年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 63件、助成金総額 4,984万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額:1,544件・11億7,903万円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」に助成を行ってまいりました。今年度は、2018年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった602件の中から、助成先を決定いたしました。

一例:

臓器移植に対する態度と意識に関する日本とマレーシアの大学生の比較研究
助成金額 7,000ドル
マレーシア・プトラ大学 経済経営学部 准教授 ホー・ジョアン(他2名)

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