2019年度「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」1億487万円余、および「アジア諸国における日本関連研究助成」4,944万円余の助成を決定

1.2019年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、28年に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
今年度は、2019年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内110件、海外45件)の中から、助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 46件、助成金総額 6,982万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):813件・16億6,628万円>

一例:

沖縄県立博物館・美術館(沖縄県那覇市)
しゅうるしともえもん沈金ちんきん大御供うふうくふぁん保存修理事業
助成金額 400万円

本品(沖縄県指定有形文化財)のほか「大御供うふうくふぁん」は、徳川美術館とホノルル博物館所蔵の3作例しか現存が確認されていない。琉球の王家・王族家の祭祀道具として使用されたもので、琉球王国文化を考えるうえで貴重な作品である。

一例:

倉敷市教育委員会(岡山県倉敷市)
西山遺跡出土特殊器台修復事業(弥生時代)
助成金額 185万円

本特殊器台(倉敷市指定重要文化財)は、1997年に倉敷市真備町の西山遺跡から棺に転用された状態で発掘された弥生時代の土器である。発掘後は復元されて地元の歴史民俗資料館に展示されていたが、平成30年7月豪雨(いわゆる西日本豪雨)で資料館が水没したことにより大きな被害を受け、修復が必要な状況にある。

2.海外

助成対象 17件、助成金総額 3,505万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):338件・7億9,570万円余>

一例:

帝京大学 文化財研究所 教授 山内 和也
後期青銅器時代のバズギル(イラン)出土の青銅器群の保存修復
助成金額 180万円

古来文明の十字路、東西交通の要衝であったイラン北東部の村において、2001年、住民により大量に発見された紀元前10世紀頃の後期青銅器時代の金属製遺物です。当時の製造技術や流通を知り得る貴重かつ考古学上重要なものです。

一例:

シアトル美術館 修復部長 ニコラス・ドーマン
シアトル美術館(アメリカ)所蔵「阿弥陀二十五菩薩来迎図」の修復
助成金額 12,000ドル

1933年に設立されたシアトル美術館は、7,000点以上の日本・東洋美術コレクションを有する美術館です。本品は、25体の菩薩を従えた阿弥陀如来が蓮台に乗って西方浄土へ導く様子が描かれており、截金が施された大変豪華で美しい作品です。

2.2019年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 67件、助成金総額 4,944万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額:1,611件・12億2,847万円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」助成を行ってまいりました。今年度は、2019年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった549件の中から、助成先を決定いたしました。

一例:

タイ・コーンケン大学 教育学部 数学教育学科 助教授
サンパン ティンウィャントーン (他2名)
研究テーマ『日本、ラオス、タイにおける数学的なコミュニケーション学習の比較研究』
助成金額 100万円
本研究は、日本、タイ、ラオスでの数学教育の現状を、実際の授業を事例として比較し、タイとラオスについては数学教育の改善策を提示することを目的とするもの。

一例:

韓国・延世大学校 国学研究院 研究教授
李セボン
研究テーマ『明治日本における「自由」観の変遷研究』
助成金額 65万円
本研究は、東アジアにおいて最初に近代化に成功したといわれる明治日本の思想史が持つ重層性を明らかにし、日清戦争以降の歴史進行とは別の可能性が存在していたことを改めて考えるもの。

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