2020年度「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」1億595万円余、および「アジア諸国における日本関連研究助成」4,984万円余の助成を決定

1.2020年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、29年に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
今年度は、2020年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内107件、海外49件)の中から助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 51件、助成金総額 7,098万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):864件・17億3,726万円>

一例:

宝幢院(滋賀県高島市)
絹本著色 地蔵十王図保存修理事業(桃山時代)
助成金額 389万円

本地蔵十王図は全21幅からなり、10幅の十王図の他11幅は、地獄道等六道の一場面、だつや地蔵三尊などを描いています。21幅が完全に残っていることから、我が国の地蔵信仰を理解する上でも、大変貴重な図像であります。しかし、各幅いずれも傷みが進行しており、前年修復を終えた2幅以外についても7ヵ年計画で修復を図ることになりました。

一例:

大作町会(千葉県市原市)
木造薬師如来坐像保存修理事業(平安時代)
助成金額 83万円

ヒノキ材の割矧造の本像は、面部・体部・衣文等の特徴が11世紀の仏師定朝の影響を受けていることを示し、制作は12世紀頃と推定されています。平安時代後期の佳作として、地域の文化を考える上で重要な作品です。しかし、令和元年10月25日の台風21号により、本像を安置する堂宇の裏山が崩れ大きな被害を受け、修復が必要になりました。

2.海外

助成対象 16件、助成金総額 3,497万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):354件・8億3,068万円余>

一例:

ホイアン文化遺産保存管理センター
ベトナムのホイアン日本橋の保存修復事業(事前調査)
助成金額 30,400ドル

ベトナム中部のホイアン市はユネスコの世界遺産に登録されています。その歴史的町並みにある「来遠橋」(通称「日本橋」)と呼ばれている橋が修復の対象です。この橋は日本町が形成された時期に日本人により建設されたとされており華麗な装飾を伴う木造の上屋が見事です。

一例:

クリーブランド美術館
「繍仏(しゅうぶつ)阿弥陀三尊来迎図」の修復(事前調査)
助成金額 11,600ドル

クリーブランド美術館は1916年に開館し、約2,000点の日本美術品を所蔵しています。修復対象は、阿弥陀如来と観音・勢至菩薩の三尊が、臨終の念仏行者を迎えに来る姿を刺繍により絵画的に表現した来迎図です。この作品は、室町時代に制作され、刺繍に頭髪が織り込まれている珍しい作品です。

2.2020年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 65件、助成金総額 4,984万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額:1,676件・12億7,832万円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」に助成を行ってまいりました。今年度は、2020年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった486件の中から助成先を決定いたしました。

一例:

研究テーマ『在日バングラデシュ移民の生活と労働にみるCOVID-19の影響』
チッタゴン大学 社会科学部 犯罪警察学科 教授/前学科長
イフティカル・ウディン・チョドリ
助成金額 75万円
本研究は、日本におけるバングラデシュからの移民、およびその家族を対象とし、新型コロナウイルスの感染拡大により、彼らの労働や生活にどのような影響を与えているか調査を行い、外国人労働者たちが陥っている窮状を把握し、適切な対応がなされるように提言するもの。

一例:

研究テーマ『日台共通の文化遺産となり得る「台北昭和町」家屋群の今日的価 値及び家族史に関する研究』
台湾中央研究院 民族学研究所 助研究員
黄 智慧
助成金額 130万円
本研究は、老朽化などにより姿を消しつつある歴史的な空間である台北市の「昭和町」エリアに関し、日本統治時代から現在に至る地域史、家族史を記録として残していくためのインタビュー調査及び史料調査を行うものである。

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