2024年度「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」1億573万円余、「修復文化財展示事業助成」547万円、および「アジア諸国における日本関連研究助成」5,025万円余の助成を決定

1.2024年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、設立以来30年以上に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
今年度は、2024年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内116件、海外43件)の中から、助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 46件、助成金総額 7,252万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):1,050件・20億2,144万円>

一例:

京都府立盲学校(京都府京都市)
京都盲唖院関係資料保存修復事業
助成金額100万円

明治11年(1878)に創立された、盲・聾教育を行う日本最初の公立学校である京都盲唖院およびその後継学校に関する資料群である。我が国の盲・聾教育史ひいては近代教育史研究上の価値が高いとされ、平成30年(2018)に重要文化財に指定されている。しかしながら、資料の中には傷みが進行しているものもあり、今回その一部について5ヵ年計画で修復を図る。

一例:

石馬寺(滋賀県東近江市)
絹本著色 釈迦如来坐像図修復事業(朝鮮:高麗時代)
助成金額280万円

寺伝では、「飯盛朱釈迦」と称される、仏鉢を持つ珍しい如来像である。彩色の方法、大衣の金泥文様などから朝鮮・高麗時代(14世紀)の作と考えられている。描かれた如来像について、阿弥陀如来や薬師如来とする説もある、希少性の高い高麗仏画である。本紙料絹の損傷の進行が懸念される状況にあり、2ヵ年計画で修復を図る。

2.海外

助成対象 12件、助成金総額 3,321万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):407件・9億6,530万円余>

一例:

ミネアポリス美術館(アメリカ合衆国)
殷代青銅器(鴟鴞尊(しきょうそん))の修復
助成金額 10,000ドル

対象は、紀元前13~12世紀に遡る中国殷代の青銅器で、現存するふくろう型青銅器数点の一つとして非常に希少性が高いものである。可愛らしい姿は子供たちの人気を博していたが、落下により大きなダメージを受けたため日本の工房へ移送して修復を行なう予定である。

一例:

京都市立芸術大学 教授 金田 雅子
インド・ラダック地方エンサ寺の仏塔壁画の保存
助成金額 173万円

対象は、インド・ラダック地方北部のヌブラ渓谷にあるエンサ寺院にて2020年に発見された仏塔壁画で、その描写表現は7世紀ごろの古い様式と共通点が認められる。現状、崩れた仏塔の下に位置する壁画に対して暫定的な保全措置が講じられているが、早急に保全環境の改善とともに、剥落止めや支持体の補強など応急措置を実施していく予定である。

2.2024年度 「修復文化財展示事業助成」(新設)

助成対象 4件、助成金総額 547万円

文化財維持・修復事業助成(国内・海外)を受けて修復された文化財を公開展示する事業への助成を新設致しました。初年度となる今年度は、2024年10月~11月に助成対象を公募し、応募のあった4件すべてを、助成先として決定いたしました。

一例:

岡山大学(岡山県岡山市)
倉敷市楯築遺跡特殊器台修復記念展示会事業
助成金額 100万円

倉敷市楯築遺跡特殊器台は、1979年に岡山大学による楯築墳丘墓第3次調査によって出土した弥生時代の土器で、「埴輪の起源」としても注目されている。出土後復元作業が行われて保管されてきたが、50年近くが経過し、修復箇所の劣化が進んだことから住友財団の助成を受けて2024年度に修復が行われた。修復費用の調達には、クラウドファンディングも活用され、市民の関心も高いことから、修復完成披露の展示会が企画され、岡山大学考古資料展示室で展示が行われることとなった。

3.2024年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 66件、助成金総額 5,025万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額(単純累計):1,947件・14億7,741万円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」に助成を行ってまいりました。今年度は、2024年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった891件の中から、助成先を決定いたしました。

一例:

研究テーマ『学問と政治:昭和前期の日本神話学を手がかりに』
中国 深圳大学 外国語学院 副教授
高 偉 〔Wei GAO〕
助成金額 100万円
本研究は、昭和前期の松村武雄、松本信広、三品彰英、中島悦次らの神話学を対象に、学問がいかに政治のために曲げられていたかを探り、同時期の日本神話学を位置づけることを狙いとする。

一例:

研究テーマ『15世紀から17世紀にかけての琉球王国とジャワ島における王国関係の再検証』
インドネシア ガジャマダ大学 文化科学学部 講師
Akbar Rizqi Dhea HABIBI
助成金額 70万円
本研究は、15世紀から17世紀の琉球王国とジャワ島における王国関係を再検証するもの。両者の関係を明らかにすることにより、東アジアと東南アジアの海上ネットワークの理解を深める。

一例:

研究テーマ『ラオスと日本の多文化教育における教員教育の比較研究』
ラオス カンカイ教員養成大学 講師
Sommay SHINGPHACHANH
助成金額 50万円
本研究は、ラオスと日本における多文化化が進む学校教育の現状と課題についてフィールドワークを通じて明らかにし、多文化教育に対応できる教員の育成、研修のあり方を両国の比較を通じて導き出す。

PageTop