三井住友銀行大阪本店ビル

近代建築を代表する規模と美しさを誇る住友ビルディングの魅力を概観します。

三井住友銀行大阪本店ビル

整然と居並ぶ窓が生み出す陰影

住友ビルデイング

土佐堀川に影を映す整然とした窓。壁の薄黄色の穏やかな色合いは、周囲を威圧することなく、かつストイックにそこに佇んでいる。旧住友本社と連系各社の本拠であった「住友ビルデイング」(現・三井住友銀行大阪本店ビル)は、東西74m、南北84mに及ぶ大規模建築。1926年(大正15年)に第一期、1930年(昭和5年)に第二期工事が完成した。北東西の各エントランスは竜山石(※1)積み円柱に堂々としたイオニア式オーダーが施されている。濃淡のある自然石の風合いが生かされた分厚い壁に、奥行きのある縦長の窓が規則的に刻まれ、そこに生まれる陰影が、重厚で質実な印象をもたらしている。

※1 兵庫県高砂市伊保町竜山に産する流紋岩質凝灰岩の石材名。

ブロンズ細工が際立たせる端正な美

南面の壁は、他の三面とは異なり、規則的なメダリオンとアーチ窓が並ぶ。狭い通りから見ても、やさしさを感じられるようにとの配慮だ。設計は、住友合資会社工作部で、当初の計画では鉄骨鉄筋コンクリート七階建てとなる予定だったが、工事途中に関東大震災が起こった。実際に東京の惨状を見聞した住友家十五代吉左衞門友純の命により五階建て(※現在は改築されて六階建て)に変更され、現在の規模となった。別子銅山を経営した住友の建物らしく、門扉や照明、雨樋、ガーゴイル(※2)に至るまでブロンズ製で、細かな細工が端正な外観をいっそう印象的に見せている。

※2 動物などをかたどった雨水を落とすための吐水口。

南面の壁
照明

列柱が林立する格調高い空間

シンプルな外観の印象とは異なり、建物の中に入ると、一転、華麗な意匠に包まれる。なかでもコリント式の列柱31本が林立し高さ12mの天井を支える一階の「銀行営業室」の空間構成は圧巻。磨き上げた大理石“トラバーチン”(※3)が、暖かさを醸し出し、黒大理石のカウンターや、アカンサスをモチーフにした文様、幾何学的な天井の装飾などと相まって、格調高いホールを創出している。日本の近代建築を代表する規模と美しさを誇るこのビルは、戦災をくぐり抜け、現在でも三井住友銀行大阪本店として使用されている。

※3 平行な縞状の細孔を持つ無機質石灰岩。

列柱
天井

建築データ

竣工
第1期(北側)1926年(大正15年4月)
第2期(南側)1930年(昭和5年8月)
設計・施工
住友合資会社工作部 大林組
設計監督・校査
日高胖
立面図主査(外観及び内外仕上げ)
長谷部鋭吉
平面図主査(平面及び機械設備)
竹腰健造
構造図主査
光安梶之助
所在地
大阪市中央区北浜4-6-5

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