住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

住友精密工業×気候変動、脱炭素

精密技術で水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」
脱炭素に向けて水素バリューチェーン構築に貢献

 気候変動
定義は様々だが、いわゆる地球温暖化を指すことが一般的。取り組みとしては温室効果ガス(GHG)削減と災害対策が中心となる。京都議定書を受けて2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択された「パリ協定」において、世界全体の平均気温上昇を産業革命前と比較してプラス2℃より低く保ちつつ、プラス1.5℃に抑える努力の必要性が打ち出された。地球温暖化が進むと気象は極端な現象を引き起こすといわれ、企業にとってはビジネス上の深刻なリスクとなり得るため、中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められている。住友精密工業は気候変動対策として需要が増大すると予想される電動モーター冷却技術やデータセンター冷却技術、水素・アンモニア関連の熱交換器など熱マネジメント関連の新規領域での技術開発やビジネス開拓を進める。
 脱炭素
地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)、とりわけ大きな影響をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出を抑制し、GHGの実質的排出ゼロを目指すこと。カーボンニュートラルとも呼ばれる。日本政府は、パリ協定が掲げた世界の平均気温上昇抑制と今世紀後半のGHG排出実質ゼロという目標を達成するため、2030年までにGHG排出を2013年度比で26%削減する目標を設定。2020年10月には、2050年のカーボンニュートラルを目指すことを当時の菅義偉首相が宣言した。2021年4月に米国主催気候サミット(オンライン開催)においては、2030年までにGHG排出を2013年度比で46%削減する目標を表明した。住友精密工業は、これまで極低温流体分野で培った熱交換器技術を活用して製品開発を進め、水素・アンモニアバリューチェーンにおける「つくる」「つかう」など様々な用途の熱交換器の開発に取り組んでいる。

住友精密工業は1963年にアルミニウム合金製プレートフィン型の低温工業用大型熱交換器の製造を開始し、1969年には液化天然ガス(LNG)気化装置の製造を開始した。海外の天然ガス採掘場で天然ガスを採掘、湾岸エリアで液化し、LNGとして海上輸送して日本の受入基地で気化し、天然ガスとして使用するというバリューチェーン構築の重要な技術の一端を担ってきた。

LNGは、天然ガスの液化過程で硫黄分などの公害物質が取り除かれ、石油や石炭と比較すると燃焼時のCO2排出量が少なく発電効率も高い。1973年のオイルショックからエネルギーミックスを目指して導入が推進され、日本では電源構成の37.1%(2019年度)という大きな部分を占めている。

住友精密工業は2022年4月に、2つの事業(産業用熱交換器事業・航空機用熱交換器事業)を横断する熱マネジメントプロジェクトチームを設置した。「ポスト5G・デジタル社会の推進、および脱炭素社会の実現への貢献」を目指し、電動モーター冷却技術やデータセンター冷却技術、水素・アンモニア熱交換器の開発など、電子部品冷却分野および極低温流体分野で培った技術を生かして新規領域での技術開発とビジネス開拓を加速する。

地球温暖化による気候変動問題への対応として、日本は2017年に、世界で初めてとなる水素の国家戦略である「水素基本戦略」を策定した。2021年の第6次エネルギー基本計画では、2050年カーボンニュートラル宣言を踏まえて、2030年度の電源構成の1%程度を水素・アンモニアで賄うこととされた。2023年に水素基本戦略が改定され、水素社会の実現に向けた取り組みを加速する。2030年の水素の導入目標を300万トン、2050年に2000万トン程度と設定、水素社会の実現に向け官民合わせて15年間で15兆円を超えるサプライチェーン投資を検討している。水素のバリューチェーンを構築して社会実装する一連の流れは、海外からLNGを輸入して導入した当時と重なる点が多い。水素を海外で液化する「つくる」分野、日本に海上輸送する「はこぶ」分野、気化して使用する「つかう」分野の実証は完了している。

住友精密工業では、水素を「つくる」分野と「つかう」分野に特に注力している。水素を「つかう」の技術では、2015年にステンレス鋼製拡散接合型熱交換器の製造を開始している。超高圧環境での使用に耐性があり、燃料電池自動車用の水素ステーションに設置される水素供給装置に採用されている。

水素を燃料とする水素燃料船では液化水素を気化する熱交換器の開発にも取り組んでいるほか、航空機分野でも水素を燃料とした水素航空機の開発が始まり、液化水素を気化するシステムや熱交換器が求められる。2050年に向けて液化水素サプライチェーンの社会実装が進めば、さらに多くの気化器が必要になることが想定され、新たな熱交換器開発にも積極的に取り組む。

2023年5月、住友精密工業は岩谷産業と液化水素を気体にする「オープンラック式気化器」(ORV)の共同開発契約を締結した。岩谷産業は国内唯一の液化水素サプライヤーで、水素販売に強く供給網の構築や液化水素の国内受入基地の運用などを担い、水素関連事業を加速するためインフラ装置の開発を進めている。

住友精密工業はLNG気化器としてのORVの納入実績が豊富で、液化水素の気化でもORVの需要があることは感じていた。しかし、LNGの温度が-162℃であるのに対して液化水素は-253℃とさらに低温になることから、ORVで性能要件を満たせるか実証試験が必要だった。兵庫県尼崎市にある岩谷産業の中央研究所には日本では数少ない液化水素の試験設備があり、同じ尼崎市内の住友精密工業本社にも近いため、両社で液化水素用ORVの共同開発を進めやすい点も幸いした。

海外で製造した水素は液化することで体積が800分の1程度になり、船などでの運搬量が増大する。運ばれてきた液化水素を受入基地で貯槽し、必要に応じて気化してから、発電所などに送って使用する。住友精密工業のORVは多数の伝熱管を並べたパネルの外面に海水を流すことで内部の液化水素を気化させる方式で、これまでLNG気化器に半世紀以上にわたって採用されてきた技術を応用する。外部熱源として海水を使用するためランニングコストが低く、構造がシンプルなため運転監視や保守点検が容易であるなど、信頼性と安全性が高いのが特徴だ。

脱炭素社会を実現してカーボンニュートラルを達成するためには、水素をエネルギー源として活用するほか、アンモニアの利用、CO2の削減や回収・有効利用・貯留(CCUS)、水素を利用した自動車・船舶・航空機の開発、水素とCO2を用いた合成燃料、水素還元製鉄の技術開発など様々な市場の拡大が期待される。住友精密工業は、スローガンである「持続可能な社会を支える世界一の『精密』を誰よりも先に創る」の下、「精密」技術と「精密」なものづくりをさらに追求・発展させることにより、今後も事業活動を通じて様々な社会課題の解決に貢献していく。

住友精密工業
https://www.spp.co.jp/
住友精密工業グループは、航空機装備品、熱交換器や油圧制御、オゾン発生装置や半導体製造装置、モーションセンサーなど、多彩な分野で独自の精密技術・精密なものづくりによるソリューションを提供しています。今後も社会の変化を的確に捉え社会とともに持続的に成長、発展する企業を目指しています。

各社が取り組む社会課題

脱炭素 パネルイメージ

脱炭素

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介します。

サプライチェーン パネルイメージ

サプライチェーン

サプライチェーンのグローバル化や複雑化に伴い、企業にはサプライチェーン上で発生する課題への適切な対応が求められています。

新しい働き方 パネルイメージ

新しい働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が従来型の働き方を見直したことで、働き方改革が加速しています。

健康 パネルイメージ

健康

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって従業員の健康への配慮はよりいっそう重要なテーマとなっています。

気候変動 パネルイメージ

気候変動

地球温暖化の進行はビジネス上の深刻なリスクを引き起こす可能性があります。そのため、企業には中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められています。

モビリティの電動化 パネルイメージ

モビリティの電動化

環境負荷軽減への対応や社会的ニーズの高まりとともに、モビリティの原動力がガソリンから電気へと置き換わりつつあります。

コミュニティ パネルイメージ

コミュニティ

人と人のつながりであるコミュニティを再生・再構築することで社会課題解決に向き合う動きが活発になっています。

貧困 パネルイメージ

貧困

子どもの貧困問題への対応が喫緊の課題になるなど、現代の日本においても貧困は深刻な社会課題の一つとなっています。

次世代の育成 パネルイメージ

次世代の育成

日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっています。

先端医療 パネルイメージ

先端医療

近年における医療の飛躍的な進歩には、大学等の研究機関はもとより、企業による最先端技術への取り組みが大きく寄与しています。

地産地消 パネルイメージ

地産地消

再生可能エネルギーを生かし、地産地消を通じて脱炭素に貢献しながら産業振興も目指す取り組みが各地でスタートしています。

食品ロス パネルイメージ

食品ロス

世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンが毎年廃棄されているとされ、食品ロスの解決は一刻を争う課題になっています。

地球環境との共生 パネルイメージ

地球環境との共生

人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべきさまざまな課題について、各社の取り組みを紹介します。

強靭性・回復力 パネルイメージ

強靭性・回復力

自然災害だけでなく、さまざまなハザードがあり、その姿は時代とともに変化し、激甚化もしています。それに負けない強靭性や回復力を持つしなやかさが求められています。

地方創生 パネルイメージ

地方創生

地域の資源を生かして産業を強化することで、地方の人口減少を克服し、持続的な社会を創生する取り組みを紹介します。

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