つぼいひろきの住友グループ探訪
SMAS(住友三井オートサービス)
EV試乗会「e-PARK横浜」
SMAS(住友三井オートサービス)は、サステナブルな社会の実現に向け、電気自動車(EV)を基軸としたモビリティプラットフォームの整備を推進しようとしている。
SMAS(住友三井オートサービス)は、サステナブルな社会の実現に向け、電気自動車(EV)を基軸としたモビリティプラットフォームの整備を推進しようとしている。
菊名ドライビングスクールで開催された「e-PARK横浜」の様子。
参加者は国内外のEVとガソリン車を試乗して6台の車種を乗り比べられる。
e-PARKでは、EV試乗会のほかセミナー開催やブースを設置し、EV導入を検討している企業や自治体に向けて情報提供を行っている。
横浜市港北区の「菊名ドライビングスクール」で、電気自動車(EV)とガソリン車を試乗できる体験会が開かれた。住友三井オートサービス(以下、SMAS)が主催する「e-PARK横浜」だ。地元の企業や自治体から約50人が参加し、1人6台(EV5台、ガソリン車1台)の車両を試乗して、6台の車種を乗り比べながら、加速感の違いや走行中の静かさを体験した。SMASは2023年夏から、EV試乗会「e-PARK」を千葉、大阪、名古屋、岡山、富山、福岡、東京、札幌、栃木などで開催してきており、2025年度も全国に広げようとしている。同社が目指すのは「サステナブルな社会に向けたモビリティプラットフォーマー」だ。ヒト・モノの移動に関わる「あらゆるニーズに応える『総合モビリティサービス』」を事業の根幹とし、その大きな目標の1つとして「EVの普及促進」にも注力している。
日本国内でのEV普及率は2024年で2%弱。世界の中では低い水準にとどまる。しかし、ガソリン車よりも走行中の環境負荷が小さいことはもとより、震災時に電気などのインフラが停止した際には非常用の「動く蓄電池」として活用できる。そうした特性から、「特に自治体が使う公用車として、EVはもっと導入されていくべきだと考えています。そのEV導入において『EVワンストップサービス』を提供しているのが、SMASの大きな強みだと思います」と話すのは、営業戦略本部営業推進部長の戸上淳一さんだ。
一例が「Mobility Passport(モビリティパスポート)」だそうだ。多くの自治体で公用車の使用実績を運転日報に記帳しているが、今でもほとんどが紙ベースで管理されているという。これを電子化するビジネスMaaSアプリがMobility Passportだ。スマートフォンやタブレットで運転日報を入力できるほか、呼気にアルコール成分が残留していないかなども検知器を使用して把握・記録でき、酒気帯び運転の防止につながる。
そして何より、自治体が保有する公用車の稼働状況を車両管理担当者は一覧して確認することができる。「どの車両が未稼働なのかも把握でき、カーシェアのように車両の共有化が可能になります」と戸上さんは説明する。どの公用車が今、空いているかが分かれば、使いたいタイミングで「予約」もしやすくなる。実際にSMASからMobility Passportを導入した京都府向日市は、40台の公用車を一元管理することで、以前より6台の公用車を削減し、20台をEVに切り替えることに成功したそうだ。消防車や救急車などEV化が難しい車両を除き、2030年までに公用車の40台をEVに転換する計画だ。
EVは新車だと「製造時の温室効果ガスの排出量がガソリン車より多い」という面もある。ライフサイクル全体で見ると二酸化炭素(CO2)などの排出量は、ガソリン車よりも走行距離が長くならないと減らない。現在、国内で中古となったEV車両は7割以上が海外に輸出され、これに伴ってEVに使われる各種のレアメタルが海外に流出する事態も招いている。
「そこでSMASは中古のEVをリユースして自治体に使っていただくプロジェクトも2018年から始動しています」と、次世代モビリティ推進室長の横山満久さんが説明する。その先導役としてリユースEVの活用を始めたのが富山市だ。新車EVに比べCO2排出量が少ないうえに、中古なので価格も安くなるため公用車として導入しやすい利点もある。
リユースEVは搭載しているバッテリーの劣化が課題となるが、2次利用、3次利用となっても「長距離を移動せず、短距離の地域内だけを走る公用車であれば充電性能の点からも全く問題ありません」と、横山さんは解説する。新車でリースしてから数年後に期間満了を迎えたEVをリユースすれば、無駄なくEVを活用して循環させるエコシステムを構築していくことができる。
横山さんは「地方の小さな自治体ではガソリンスタンドがない町村も増えています。でも、電気なら必ずあり、設備があれば自宅でも充電が可能です」と強調する。未来を見据えて、EVを中心とした自動車リースのエコシステムを築く取り組みが、動き出している。
EVは国内で「誰もが乗ったこと/運転したことがある」というレベルにまでは普及していないのが実情だろう。そこで「e-Park」のように、複数のEV車種を乗り比べできて、実際に使いやすさや充電の方法を確認できるイベントは、多くの人が興味を持つに違いない。地震や大雨など自然災害による避難生活が「どこでも起こりうる日本」だけに、避難生活を支援する自治体の役目としてもEVの導入は急がれるべきだと実感した。